ミュージカル『VIOLET』ゲネプロ公開! オンステージシート観劇
STORY
1964年、アメリカ南部の片田舎。幼い頃、父親による不慮の事故で顔に大きな傷を負ったヴァイオレットは、 今まで人目を避けて暮らしていた。しかし今日、彼女は決意の表情でバス停にいる。あらゆる傷を癒す奇跡のテレビ伝道師に会う為に。西へ1500キロ、願いを胸に人生初の旅が始まる。
ミュージカル 『VIOLET』の主人公、ヴァイオレットは顔に大きな傷を追っています。しかし、観客の目にその傷は見えません。あるいは、見えていないだけかもしれません。外見の傷、内面の傷、その人が感じている傷がどのくらい浅いか深いかはわかりません。人生の色々な出会いが、その傷を時にはひりつかせることもあるけれど、最終的には優しく愛おしむように癒すことが起こり得る、それは奇跡的な瞬間です。多かれ少なかれ、人生という旅において誰しも似た経験を持つ私達が、温かい気持ちになれるような舞台でした。
ヴァイオレットと運命的な出会いを果たす、黒人兵士フリックと白人兵士モンティの対象的な二人の男性。フリックが人生で受けてきた心の傷も計り知れず、モンティも表には出さない彼なりに抱えてきた傷みや悩みがあります。対照的な2人の男性に会うことによって、ヴァイオレットの人生が小さな変化を見せ始めます。
ゲネプロでヴァイオレット役を演じたのは、Wキャストの三浦透子さん。黒人兵士フリック役に東啓介さん、白人兵士モンティ役に立石俊樹さん。3人の人物が最終的にどんな人生の岐路を迎えるかは、ぜひ実際の舞台で!
本当の気持ちを伝えられなかったり、裏腹な言動をして表面的に装ったり、素直になれなかったり、相手を傷つけたり、距離感を気にしながら優しく相手を労わったり…という人間なら誰しも起こりえる様々な感情を見事に生み出しました。舞台での発声や動き、歌唱をふまえながら、とても自然に、移りゆく3人の関係性を見せていることが演技力の高さと起きているドラマに観客を巻き込む力量を感じさせます。
オンステージシートは、舞台上両側の上手下手(かみて・しもて)に用意されています。それは、例えばカウンターやバスでたまたま居合わせた人の人生の出来事を垣間見た、あの経験に近いものがあります。言葉を伝えている近くでその表情や声を感じることもあるし、本当の気持ちを隠している人物の背中や横顔を見るかもしれない。そういった、他人の人生に一瞬でも思いを寄せるような気持ちがリアルに感じられます。
また、演出の仕掛けであろう絶妙なタイミングで、演者がふいにオンステージの観客を見ると、一瞬、話の本筋の世界に入ったような、舞台エキストラになったような、また離れて外から俯瞰して眺めるような感覚になります。それは、人生において人が繋がったり、離れたり、あるいはまた再び通いあったりする関係、あるいは街で偶然目が合った人と一瞬でも繋がる感覚にも似ています。
一方、ステージに面して座る客席側では舞台美術も含めて全体の世界観を受け取り、この物語が伝えたい演出の核となる中心の芝居に集中しながら、物理的な距離を超えて心を近く物語に入り込めると思います。
ミュージックホール・シンガー sara、ヴァージル 若林星弥、リロイ 森山大輔、ルーラ 谷口ゆうな、老婦人役 樹里咲穂、伝道師役 原田優一(*敬称略)はメインの役柄が伝えられていますが、実際は違うキャラクターを何役も演じて舞台に登場します。樹里咲穂さん、原田優一さんは真逆とも言えるキャラクターを演じ分けて、見事な変身ぶり!
生演奏の音楽も非常に魅力的で、同じフレーズの旋律も、話の流れで違った印象を与え、ヴァイオレットや様々なキャラクターの心の変遷を表すよう。バンドをバックに、ホールさながら、saraさんの歌声を聴く場面は圧巻です。
そして、物語に深みを与える親子役は、父親役にspi、幼いヤングヴァイオレットにトリプルキャストの生田志守葉、嘉村咲良、水谷優月(*敬称略)。ゲネプロでは、spiさんと生田志守葉さんが演じる場面が、大人に成長したヴァイオレットの葛藤や彼女が負った深い傷、その一方で、優しい父との思い出といった心象風景のルーツを感じさせてくれました。
梅田芸術劇場が英国チャリングクロス劇場と共同で演劇作品を企画・制作・上演し、演出家と演出コンセプトはそのままに「英国キャスト版」と「日本キャスト版」を各国それぞれの劇場で上演したミュージカル『VIOLET』。
本作品の演出は、第31回読売演劇大賞はじめ数々の受賞歴を持つ、気鋭の演出家・藤田俊太郎さん。旅の途中で起きる出来事を題材にした映画をロードムービーと呼びますが、アメリカの長距離バスの旅でヴァイオレットを待ち受けるロードムービー的な演劇を、最終の地まで導いてくれます。
制作発表記者会見で演出家が語ったように、Wキャスト、ヤングヴァイオレットのトリプルキャストで違う表現の舞台が実現。幾通りものヴァイオレットの人生の物語が紡がれます。
自分の感情を時に重ね合わせながら、長距離バスと一緒に辿り着いたような爽やかな気持ちに。
終演後には、劇中曲「マイ・ウェイ」を思わず口ずさみたくなる、約2時間の上演の旅。
ぜひ体験してみては?
撮影:岡千里
ミュージカル『VIOLET』
音楽:ジニーン・テソーリ (『ファン・ホーム』2015年トニー賞最優秀オリジナル楽曲賞)
脚本・歌詞:ブライアン・クロウリー
原作:ドリス・ベッツ『The Ugliest Pilgrim』
演出:藤田俊太郎
出演
三浦透子/屋比久知奈(Wキャスト) 東啓介 立石俊樹
sara 若林星弥 森山大輔 谷口ゆうな 樹里咲穂 原田優一 spi 生田志守葉/嘉村咲良/水谷優月(トリプルキャスト)
東京公演
期間:2024年4月7日(日)〜4月21日(日)
会場:東京芸術劇場プレイハウス
料金ほかチケット情報、最新状況は公式まで
公式HP
https://www.umegei.com/violet/
公式X
@musical_violet_
大阪公演、福岡公演、宮城公演あり