「もうひとつの京都」〜福知山編〜 明智光秀が築いた城下町の福知山スイーツ 

大江山の雲海

「もうひとつの京都」を旅する

京都は、京都市だけにあらず。「もうひとつの京都」を旅する。京都府内には、まだ知られざる各エリアの魅力がある。それは、海の京都、森の京都、お茶の京都、竹の里・乙訓と呼ばれ、それぞれの魅力を持った、旅のストーリーがある。

 

〜福知山編〜

鬼が棲むという伝説を持つ大江山は、2007年に「丹後天野橋立大江山国定公園」に指定された。由良川の霧と丹波の山々による雲海の景色は幻想的だ。

福知山城、鬼伝説の大江山がある福知山。実は「肉とスイーツのまち」で知られる、食が魅力の城下町でもある。

ここは、「海の京都」「森の京都」両方の特色を持つ、京都府中部の町である。

「森の京都」である福知山の上質なジビエは、魅力的な食材のひとつで、鹿肉ローストのジャーキーなど地域の特色を生かした生産をしている。

また、福知山の夜久野(やくの)高原は、30〜38万年前に、京都府で唯一の火山「宝山」の噴火によってできたと伝えられる。昼夜の寒暖差が大きい気候で良質の蕎麦が育ち、夜久野産蕎麦は地元の名産だ。

 

福知山城天守閣で竜王戦!

2020〜2021年に放映された大河ドラマ『麒麟がくる』の主人公・明智光秀。福知山城は、明智光秀が築いた城である。光秀以降、歴代の城主を迎えて、改修と増築がされてきた。

初代城主の明智光秀は、謎が多く「本能寺の変」を起こしたとされているが、地元では善政をおこなった名君として親しまれている。織田信長に丹波国を任された光秀が築いた城が福知山城であり、城下町が生まれた。

四季折々の福知山城

その福知山城で、(当時)四冠の竜王・藤井聡太に挑む八段・広瀬章人の対局である「竜王戦」が昨年2022年11月8日・9日に開催され、町は「お城将棋」の一戦に沸いた。福知山城天守閣で行われたのは、竜王戦史上初の城での対局となった2018年以来だ。

城内の特設対局室

望楼からの城下の眺めは抜群

復元された福知山城天守閣鯱瓦(しゃちがわら)

天守閣内部には、歴代福知山城主の資料が展示されている。かつての福知山城は、明治6年に出された廃城令で天守が取り壊された。昭和に入って「瓦一枚運動」と言われた、天守閣の瓦一枚分にあたる1口3000円寄附の呼びかけにより、福知山城天守が再建された。3層4階の大天守と2層の小天守は、当時の絵図資料を参考にし、復元されたものである。今でも、優美で立派な姿を見せ、町のシンボルとなっている。

福知山城

 

竜王戦福知山城対局のおもてなしメニュー!

対局2日間で、午前・午後には勝負おやつ・勝負ドリンク、昼には勝負めし・勝負ドリンクが提供される。福知山市では、おもてなしメニューとして、公募で決定した30品が用意された。濃厚な味とバニラが薫る、「明智茶屋」の光秀の愛したプリンもラインアップに。

福知山産小麦の黄金麦茶や、福知山トマトの生搾りジュースなどの勝負ドリンク、丹波福知山のアップルおさつパイ、モンブラン「丹波富士」などが実際に勝負おやつとして口にされ、話題となった。

 

丹波の栗にこだわった、極上のスイーツ

福知山城近くに店を構え、丹波栗にとことんこだわって作った美味しさの焼き菓子で有名な「足立音衛門(あだちおとえもん)」。

「お城カフェ」のある洋館

本店は京都府指定文化財「旧松村家住宅」にあり、敷地内を自由に散策できる。石の階段を上がると、レトロな洋館があり、ケーキや飲み物のイートインができる。和洋折衷の建築で、大正時代に作られた、昔ながらの硝子から見る庭園が美しい。

庭を眺めながらティータイム

竜王戦で広瀬八段が口にした勝負ドリンク、和三盆サイダー「涼」

栗のテリーヌ「天」は、地元・丹波の恵みである、厳選した粒よりの丹波栗とヨーロッパ種の栗を使っている。さらに、店主がフランスで出会ったラ・ヴィエットの発酵バター、小麦農家が丹精込めて育てた特別な小麦、手造りの和三盆糖など、いずれも最高級の厳選素材を使ったケーキ。自然でほくほくとした栗の美味しさが存分に感じられ、食べごたえがあるしっとりとした味わいは、まさにテリーヌといった食感である。

店では、栗のテリーヌ「天」のほか、パウンドケーキなど美味しい焼き菓子の数々が買える。竜王戦の勝負おやつで丹波大納言小豆餡に丹波栗が丸ごと1粒入った「王様のどら焼き 丹波大粒栗」を広瀬八段が味わい、人気となっている。

木造の主屋が本店

 

世界コンクール優勝のシェフによる、地元への愛情を込めた福知山スイーツ

「洋菓子マウンテン」は、お菓子だけではなく、チョコレートの世界を味わう「CELLAR DE CHOCOLAT」と2階にカフェ・スペースも併設している。

父の跡を継いだ「洋菓子マウンテン」を大事にしながら、自身のチョコレートブランドを新たに開いた水野直己シェフは、「ワールドチョコレートマスターズ2007」で優勝という凄い経歴を持っている。フランス留学の経験を経て、生まれ故郷の福知山に戻り、店を受け継いだ。

「CELLAR DE CHOCOLAT」で人気のボンボンショコラ(杏と塩)は、ワールドチョコレートマスターズ優勝作品。杏が引き立つ「死海の塩」を使用している。

「CELLAR DE CHOCOLAT」ボンボンショコラ 杏と塩

地元から愛され、子どもから大人まで美味しいと思えるケーキや焼き菓子、チョコレートがショーケースにずらりと並ぶ。シンプルで懐かしい感触の味わいでありながら、奥深さがある。

「洋菓子マウンテン」のケーキ

現在では、名実ともに福知山を代表する大きな店構えになった。新しい創作のアイデアを取り入れて進化しながら誇りを持って店を続ける姿は、地元の若きシェフたちの刺激や憧れの存在でもある。

ロワゾーブルー
Le’oiseau bleu(幸福の青い鳥)をイメージしたチョコレート

 

肉とスイーツのまち、これぞ福知山の名店!

福知山には、美味しいスイーツがたくさんある。「洋菓子マウンテン」の水野シェフに影響を受けたひとり、福知山出身の足立龍シェフも、パティシェ修行や料理人の経験を活かして自身の店「ku-nel クーネル」を2020年にオープンした。

テイクアウト用の一つ一つ手づくりのカヌレは絶品。丹波でとれる牛乳、卵、小麦をベースに何か作れないか、と考えて出来上がったのが「京都奥丹波カヌレ」。フランスの郷土菓子に、丹波の食材を用い、思いを込めている。丹波黒豆、丹波栗、丹波大納言小豆、京都府綾部産の甜茶やほうじ茶など、地元の素材をリスペクトしたカヌレの味の数々だ。

福知山は、実は焼肉店の数が多く、肉の聖地としても有名だ。ここ「ku-nel クーネル」では、ワインと肉も堪能できる。まさに、福知山の魅力である肉とスイーツ、両方が愉しめる店だ。肉は、100gから50g単位のオーダーカット。ステーキのほか、パスタやワインがすすむアラカルトなど、イタリアンを中心とした創作メニューがある。上質で旨味のある肉と、塩にワインを漬け込んだワイン塩が合う。

豪快な肉とワイン塩

食べたいように食べてあとは寝るだけ、という名前の店。人間らしい生活と食の喜びを応援してくれる、美味しい料理とお菓子が堪能できる店だ。

京都奥丹波カヌレ

ku-nel クーネル

旅の帰りは、自動車道にある京丹波の玄関口、特産品を揃える「道の駅 京丹波 味夢の里」で食事や買い物が愉しめる。新鮮な直売所コーナーもあるショップの京丹波マルシェでは、ここでしか手に入らないお土産も揃えている。


まだ知らない「もうひとつの京都」を旅して、体験してみてはいかがだろう。

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協力 福知山観光協会

京都府 京都府観光連盟

text by 鈴木陽子(Yoko Suzuki)

CS放送舞台専門局、YSL BEAUTY、カルチャー系雑誌ラグジュアリーメディアのマネージングエディターを経て、エンタテインメント・ザファースト代表・STARRing MAGAZINE編集長。25ヶ国70都市以上を取材、アーティスト100人以上にインタビュー。

 
 
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