温泉旅館「界 日光」に滞在して心身を清める旅 ―「将軍着座の間」の特別祈祷
温泉旅館「界」
季節の移ろいや和の趣、伝統を生かしながら現代に合わせたおもてなしを追求し、日本全国にある温泉旅館の「界」。その地域の伝統文化や工芸に触れる、「ご当地楽」や「ご当地部屋」が愉しめる。
今回は、中禅寺湖に面した風光明媚な「界 日光」と冬の旅を紹介する。
「界 日光」(栃木県・中禅寺温泉)
奥日光の入り口に位置し、標高約1,300mの中禅寺湖の畔に佇む「界 日光」は、風情ある温泉宿。敷地3,000坪に33室のゆとりある贅を尽くした造り、ほぼすべての部屋から中禅寺湖と男体山を目の前に望むことができる。社寺を中心として発展した独自の文化が愉しめる宿だ。
日光の社寺を中心に発展した建具、伝統工芸「鹿沼組子」
栃木県・鹿沼地方で栄えた伝統工芸 鹿沼組子(かぬまくみこ)。江戸時代、日光東照宮造営のために全国から集められた職人が、日光に隣接するその地にその技を伝えたのが始まりと言われている。細くひき割った木に切り込みを入れて、釘を使わず手作業で組み合わせ、何種類もの模様を作り出す。
日光ならではの「湯波会席」
日光では、「京湯葉」とは異なる「日光湯波」など、独自に発展した食文化が根付いている。山岳信仰の社寺で食事に用いられてきた「日光湯波」は、皺が多く厚みがあって食べ応えがある。
日光東照宮参拝のために作られた「日光下駄」
江戸時代、社寺への境内参入には様々な決まり事があり、履き物は「草履」を使用するのが原則だった。
しかし、日光東照宮をはじめとする日光の社寺は石や雪、坂道が多く草履では歩行が不便だった為、草履の下に木の下駄を合わせた御免下駄が考案された。それが、「日光下駄」の始まりだ。「日光下駄」は、通常の下駄とは違い、安定感があって雪を付きにくい独特の工夫がされている。足が触れる部分は竹の皮を編み込んでいるのも特徴の草履だ。
400年の歴史を刻む伝統工芸「日光下駄」の歴史や特徴をストーリー仕立てで紹介する「日光下駄談義」が、旅館では珍しい能舞台で行われる。
観客も、日光下駄を実際に履いて踊りに一部参加する体験型で、その良さを体感できる。舞台の床面がすり減るくらいエネルギッシュな、タップダンスを交えたステージだ。
日光に伝わる温泉文化
奥日光の温泉は、多くの旅人の疲れを癒してきた。江戸城までの「運び湯」文化になぞらえ、いろは坂の下から源泉を運んでいる。平安時代に開湯した奥日光の硫黄泉入浴後の「なおし湯」としての役割もある。「界 日光」のアルカリ性単純温泉は刺激が少なく、肌を優しく癒すさっぱりとした泉質で、身体を芯から温めてくれる。
日光市内の温泉旅館「界」に泊まり、世界遺産「日光東照宮」で特別祈祷を受ける(期間限定)
日光は、奈良時代の766年に勝道上人が訪れ、開山したことに始まる。日光連山の霊山「男体山」「女峰山」は、山岳信仰の山としても有名で知られている。江戸時代には、徳川家康の霊を祀る「日光東照宮」が建立された。日光に祀られることを望んだのは、家康公自身だった。
日光市内の温泉旅館「界 川治」「界 鬼怒川」「界 日光」では、「日光東照宮特別祈祷付き 温泉滞在プラン」(2023年2月28日まで)を企画。旅館滞在中に温泉に入って体を清め、特別祈祷を授けられ、明日への活力をとり戻す旅だ。
「界 日光」では、朝食前に早朝の爽やかな空気のなか、テラスで霊峰・男体山を眺めながら、「界の湯守り」から教わる「現代湯治体操」で身体を目覚めさせる。社寺参拝に用いられた「日光下駄」を履いて、雄大な男体山をイメージした腕や足を気持ちよく伸ばすポーズをとるなど、全身をほぐして血流を良くする。朝食は、美味しい日光湯波の鍋を食べ、日光東照宮参拝へと赴く。
祈祷前のお清め、貸切露天風呂
江戸時代には、東照宮参拝の前に温泉入浴することは、日光詣(もうで)をする大名たちにとって、贅沢な禊(みそぎ)だった。
「界 日光」では、祈祷を受けた日本酒を用いた貸切露天風呂がある。自身で好みの量の日本酒をかけ湯に混ぜて、心身を清めるよう入浴する。地元日光の蔵元「片山酒造」の日本酒「柏盛」を使っている。
「柏盛」は、日光二荒山神社(にっこうふたらさんじんじゃ)の別宮瀧尾神社にある「酒の泉」を元水とし、同じ日光連山より流れる大谷川の伏流水「千両水」を使っている。
中禅寺湖の畔にある日光二荒山神社 中宮祠(ちゅうぐうし)にて祈祷を受け、御神酒として奉納されている日本酒だ。特別祈祷の前日に日本酒風呂で心身を清め、参拝に備える。
「将軍着座の間」での特別祈祷
特別祈祷は、通常では入ることのできない、拝殿の「将軍着座の間」で行われる。歴代の江戸幕府将軍が通され、着座された間である。天井には葵の御紋、その真下の将軍しか座れなかった場所で祈祷を授けられ、玉串を奉納する。
「将軍着座の間」には、花鳥や霊獣の絵が描かれている。家康公の前には、聖なる霊獣も姿を現す、という敬意の表れだ。人間のような顔を持ち言葉を解すると言われる不思議な白沢(はくたく)や、伝説の尊い鳥である鳳凰(ほうおう)の姿がある。鳳凰の眼球は、江戸時代には貴重な宝物であった「ぎやまん」と呼ばれるガラス製である。
日光東照宮には、国宝の陽明門をはじめ、国宝・重要文化財建造物の見どころが数多くある。このプランでは、神職または巫女の方に境内を説明しながら案内いただく。
陽明門は、見るべき彫刻が沢山あり、全部を見ていると日が暮れてしまうほど飽きない、という意味で、別名「日暮らし(ひぐらし)の門」とも呼ばれる。
日光東照宮は、三代目将軍・徳川家光公によって「寛永の大造替」で改築され、現在のような豪華絢爛な姿になった。そこには家康公への深い敬意、徳川家の繁栄が表れている。
「逆柱」は、物事は完ぺきだと衰退するゆえ、永遠に完成しないよう、とあえて文様が逆さに描かれている。
上神庫の象の彫刻は、江戸時代当時の絵師・狩野探幽が想像で描いたものとされる。
有名な「見ざる聞かざる言わざる」の三猿のある、神厩。人間の一生が猿の姿になぞらえている八面の彫刻がある。母猿が子猿を心配する様子から始まり、大人になって恋愛をし、やがて結婚して子猿を身籠もり、最初に戻って再び新たな人生が始まる物語になっている。
三基の神輿が収められており、中央が徳川家康公、右側が豊臣秀吉公、左側が源頼朝公の神輿。祭事では、神輿がこの神輿舎を出る。天女が舞う天井画が描かれている。
可愛らしい彫刻で観光客にも人気の「眠り猫」の裏側には、二羽の「雀の像」がある。世の中が平和な共存共栄の様子を表しているとされる。
協力:界 日光、日光東照宮
撮影:STARRing MAGAZINE
界オリジナルの「直来スイーツ」をプライベートな空間で
神事の後は、神々に供えたお神酒、神饌(しんせん)をおろして頂戴し、ご利益を得る行事の「直来(なおらい)」を体験する。特別祈祷後に、日光東照宮御用達の和菓子店「日昇堂」と造った界オリジナルの「直来スイーツ」を、一般的には開放されていないプライベートの空間で味わう。
日光は、自然と信仰が調和する「聖地日光」と呼ばれる場所である。中禅寺湖のある「界 日光」の近隣には、日光山を開山した勝道上人が建てた「日光山中禅寺立木観音」、男体山をご神体に持つ「二荒山中宮祠」がある。
日光東照宮と日光山中禅寺立木観音での「厄除け」、二荒山神社中宮祠での「厄切り」など、「界 日光」に宿泊しながら日光の二社一寺での通年「日光厄除け払い切りプラン」もある。温泉旅館に泊まって、心身を清めることができる。
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<Information>
界 日光
所在地:栃木県日光市中宮祠2482-1
電話:050-3134-8092 (界 予約センター)
客室数:33室・チェックイン15時 チェックアウト12時
料金:1泊35,000円~(2名1室利用時1名あたり、サービス料込・税込、夕朝食付)
アクセス:【電車】JR日光駅/東武日光駅から東武バスで40分(いろは坂)中禅寺温泉下車、徒歩10分 【車】日光宇都宮道路 清滝インターから20分
URL:https://hoshinoresorts.com/ja/hotels/kainikko/
「日光東照宮特別祈祷付き 温泉滞在プラン」(期間限定)
期間:2022年12月1日〜2023年2月28日チェックイン *除外日あり
料金:
・界 川治 35,210 円〜
・界 鬼怒川 41,210 円〜
・界 日光 45,210円〜
*いずれも 2 名 1 室利用時 1 名あたり、サービス料・税込
含まれるもの:日光東照宮の拝観料・特別祈祷・将軍着座の間ツアー参加料、直会スイーツ、ご当地工芸品、宿泊、夕食、朝食
予約 :各施設の公式サイトより宿泊日の4日前までに要予約
定員 :
・界 川治 1日1組 *1組2名
・界 鬼怒川 1日1組 *1組2名
・界 日光 1日1組 *1組2名
備考:状況により、内容の一部が変更になる可能性あり
最新情報、予約詳細、申込期限、通年「日光厄除け払い切りプラン」は施設の公式サイトまで。
「界」とは
全国22施設に展開する星野リゾートの温泉旅館ブランド「界」
「王道なのに、あたらしい。」をテーマに、季節の移ろいや和の趣、伝統を生かしながら現代に合わせたおもてなしを追求。また、その地域の伝統文化や工芸を体験する「ご当地楽」や、地域の文化に触れる客室「ご当地部屋」が特色。2022年11月、「界 玉造」が島根県・玉造温泉にてリニューアルオープン、「界 出雲」が島根県・出雲ひのみさき温泉に、「界 雲仙」が長崎県・雲仙温泉に新たにオープン。
URL:https://hoshinoresorts.com/ja/brands/kai/
「界」予約センター
050-3134-8092 (9:30 AM〜6:00 PM)
text by 鈴木陽子(Yoko Suzuki)
CS放送舞台専門局、YSL BEAUTY、カルチャー系雑誌ラグジュアリーメディアのマネージングエディターを経て、エンタテインメント・ザファースト代表・STARRing MAGAZINE編集長。25ヶ国70都市以上を取材、アーティスト100人以上にインタビュー。