【舞台レポート】生演奏のロック・ミュージカル『スクールオブロック』上演中! 2人のデューイ、西川貴教と柿澤勇人が熱演
撮影:田中亜紀(ゲネプロにて)
アンドリュー・ロイド=ウェバー作曲のロック・ミュージカル『スクールオブロック』が現在、東京建物Brillia HALLで上演中だ。会場では重低音が響き渡り、さながらコンサート会場のよう。日本版は鴻上尚史が演出を手がけ、主人公のデューイ・フィン役を西川貴教と柿澤勇人がWキャストで演じている。
物語の舞台は厳格な名門校。ロックを愛する落ちこぼれ熱血バンドマンのデューイが偶然から名門進学校の臨時教師になりすまし、子供たちと出会って音楽を通して絆を深めていく。
学校規則や親の方針に縛られていた子供たちが、音楽の力で自信を持ち、自分の中にある才能を信じて次第に自己表現する姿は、観客を爽快な気分にさせてくれる。生徒役は大規模なオーディションの数千人から選ばれており、バンドメンバーの楽器演奏は、自分たちで全て演奏している。
ロックとは、他人から与えられた支配にとらわれず、自分がどうしたいのかを表現し、立ち向かう精神だということが舞台からシンプルに感じられる。♪「支配者に立ち向かえ」は、デューイと子どもたちが結成して自分たちで命名したバンド「School Of Rock(スクールオブロック)」による、象徴的な楽曲だ。
主人公のデューイ・フィン役を、Wキャストの西川貴教と柿澤勇人が演じる。物語の中心にいるデューイ役は、大変な難役。舞台に出ずっぱりで、シャウトもあってバンド曲を何曲も歌い続け、エネルギッシュな子どもたちを相手にロックを通して子どもたちの人生を変化させる人物としてドラマを牽引する。「最低で最高の教師」というキャラクターが、どちらのデューイにも当てはまる。
西川貴教のデューイは、ロックシンガーの持つ自由奔放なカリスマ性、ありえないほど破天荒でどうしようもないが憎めないキャラクターがぴったり。柿澤勇人のデューイは、マイペースだけれど全身全霊をかけて真摯に音楽に情熱を注ぐゆえにエキセントリック、という雰囲気。
物事の本質を見抜き、うわべだけで物事を判断しないピュアな人間性が感じられて、2人のデューイそれぞれが本当に魅力的だ。
そして、デューイが教師となる厳格な名門校の校長ロザリー・マリンズ役に濱田めぐみ。かつてはロック少女だった頃を思い出して歌う、♪「ロックはどこへ消えたの?」も聴きどころ。それぞれのWキャストに応じた、自身の演じるキャラクターを作り上げる表現力、学校の中心的存在である重要な役を担う存在感はさすが。
デューイの親友ネッド・シュニーブリー役に梶裕貴と太田基裕、ネッドの恋人パティ・ディ・マルコ役にはいだしょうこと宮澤佐江が出演し、Wキャストで演じる。過ぎ去った青春を懐かしんで恋人には弱気なネッド、デューイのような人物が許せず思ったことを言葉にして怒りまくるパティ。デューイとの対比が面白く、彼らも一生懸命に日々を生きているキャラクターとして存在する。
ネッドやパティ、マリンズ校長が登場するからこそ、デューイや子どもたちが“音楽”を通して自己実現をし、自分たちの声をあげるのが一層素敵に思える。立ち向かう覚悟を決めた人々には、新たな未来が待っていると想像させる作品だ。
ビートルズ、ディープ・パープル、ピンク・フロイド、U2、デヴィッド・ボウイ、クイーン、エアロスミス…開幕前のカーテンにはライヴ会場のようなスポットライトに、ロック音楽の変遷を網羅するように時代を彩ったレジェンド的なロッカーやロックバンドの名前が数多く映し出される。
『キャッツ』『オペラ座の怪人』『サンセット大通り』などのブロードウェイ作品で知られる世界的作曲家アンドリュー・ロイド=ウェバーを一躍有名にしたのは、全編ロック音楽の『ジーザス・クライスト=スーパースター』だった。
ミュージカル『スクールオブロック』は、作曲家が敬愛するロックミュージシャンたちへのオマージュに満ちている。そして、才能溢れる若いキャストたちへのエール、ライヴパフォーマンスから生まれる感動の瞬間や喜び、人生において自己表現の手段にもなる“音楽”の素晴らしさを、アンドリュー・ロイド=ウェバー自身が書き下ろしたロック音楽で観客に伝えてくれる。
日本初演の本作品は、劇作家の鴻上尚史が翻訳・演出を手がけている。「鴻上ワールド」と呼ばれる作風にも通じるような、笑い、不条理、芝居のテンポ感、体で伝える表現も折り混ぜながら、キーとなる重要なテーマを浮かび上がらせ、温かい視点で作品を描く。「心の叫びを解き放て! 立ち上がれ!」という痛烈な作品メッセージを、日本人でも共感しやすい人間の普遍的なテーマとして、“自由”に存在する姿を、目の前の舞台で分かりやすく示してくれるかのよう。
子どもたちのロックポーズと見事な演奏に、幸福感を覚える舞台。9月18日まで東京公演が続き、その後、大阪公演へ。人生を変えたい人、パワフルなエネルギーを浴びたい人は、ぜひ劇場へ!
撮影:田中亜紀
<Information>
ミュージカル『スクールオブロック』
東京公演
2023年8月17日(木)~ 9月18日(月・祝)
東京建物Brillia HALL(豊島区立芸術文化劇場)
大阪公演
2023年9月23日(土・祝)~ 10月1日(日)
新歌舞伎座
企画制作:ホリプロ
最新情報、出演日程、チケット情報は公式参照
公式公演ページ
https://horipro-stage.jp/stage/sor2023/
公式HP
https://sormusicaljp.com/
作品公式SNS
作品公式 X / Instagram:@sormusicaljapan
<出演>
西川貴教/柿澤勇人(デューイ)
濱田めぐみ(ロザリー)
梶裕貴/太田基裕(ネッド)
はいだしょうこ/宮澤佐江(パティ)
阿部 裕、神田恭兵、栗山絵美、多岐川装子、俵 和也、丹宗立峰、ダンドイ舞莉花、中西勝之、西野 誠、湊 陽奈、安福 毅 (五十音順)
スウィング:AYAKA、森内翔大
チーム・ビート
大久保実生:トミカ(ボーカル)
加藤悠愛:ソフィー(ローディー:楽器セッティング・運搬)
木村律花:ショネル(コーラス)
熊田たまき:ローレンス(キーボード)
後藤日向:ザック(ギター)
佐藤 凌:ビリー(衣裳:スタイリスト)
シーセンきあら:マーシー(コーラス)
中川陽葵:サマー(マネージャー)
三宅音寧:ケイティ(ベース)
宮島伊智:ジェイムズ(警備:セキュリティ)
村井道奏:フレディ(ドラム)
屋鋪琥三郎:メイソン(技術:ステージエンジニア)
チーム・コード
小川実之助:ローレンス(キーボード)
桑原広佳:マーシー(コーラス)
飛田理彩子:ケイティ(ベース)
中込佑協:メイソン(技術:ステージエンジニア)
中嶋モモ:フレディ(ドラム)
平岡幹基:ジェイムズ(警備:セキュリティ)
前田武蔵:ビリー(衣裳:スタイリスト)
真木奏音:ソフィー(ローディー:楽器セッティング・運搬)
三上さくら:トミカ(ボーカル)
三宅音太朗:ザック(ギター)
宮﨑南帆:ショネル(コーラス)
山崎 杏:サマー(マネージャー)
(五十音順)
<スタッフ>
音楽:アンドリュー・ロイド=ウェバー
脚本:ジュリアン・フェロウズ
歌詞:グレン・スレイター
翻訳・演出:鴻上尚史
訳詞:高橋亜子
音楽監督:前嶋康明
振付:川崎悦子
美術:松井るみ
照明:中川隆一
音響:山本浩一
衣裳:十川ヒロコ
ヘアメイク:宮内宏明
歌唱指導:山口正義
舞台監督:北條 孝 藤本典江
text by 鈴木陽子(Yoko Suzuki)
CS放送舞台専門局、YSL BEAUTY、カルチャー系雑誌ラグジュアリーメディアのマネージングエディターを経て、エンタテインメント・ザファースト代表・STARRing MAGAZINE 編集長。25ヶ国70都市以上を取材、アーティスト100人以上にインタビュー。