『オペラ座の怪人』コンセプトルーム 魅惑の世界

劇団四季による1988年の日本初演より幾度となく上演され、19世紀のパリ・オペラ座を舞台に、仮面で顔を隠しオペラ座の地下に潜む怪人と、彼に魅入られた歌姫クリスティーヌの悲恋を描くミュージカル『オペラ座の怪人』。その世界観が表現された「メズム東京、オートグラフ コレクション」のコンセプトルームを紹介する。

 

歌姫クリスティーヌの楽屋をイメージ

東京の水辺、ウォーターズ竹芝にあるJR東日本四季劇場[春][秋]の隣に建つ「メズム東京」に1部屋しかないこのコンセプトルームは、ほかの客室と内装のまったく異なる期間限定の特別な部屋だ。当初は劇団四季『オペラ座の怪人』の東京公演が終了する1月10日迄であったが、話題を呼んで好評を博し、大阪四季劇場(大阪・梅田)での開幕を記念して7月31日までの期間延長が決定している。

劇団四季の美術チームとの共同制作によるオリジナルアイテムの数々が、『オペラ座の怪人』の世界観を演出する。急遽、主役の代役に大抜擢され美しい歌声で大観衆を魅了した歌姫クリスティーヌが、舞台後に一息をつく楽屋をイメージしてデザインされている。

 

ベッドのヘッドボードは、作品の背景となった19世紀当時のパリ・オペラ座を彷彿とさせる。劇団四季の作品にも登場し、実際のパリ・オペラ座にある、舞台を額縁のように囲む舞台美術の「プロセニアムアーチ」をイメージしている。豪華絢爛で自由に活き活きとしたネオ・バロック様式の装飾や彫刻を模して、花や草、生き物に見えるような柔らかで動きのあるモチーフの柄を並べ、ヘッドボードの板に貼り付けた。劇団四季の美術チームと一緒に、オペラ座の写真と照らし合わせながら作り込んだそうだ。

さらに、表面の仕上げに、あえて年月の経った古さを感じさせるエイジング加工を施している。金色を均一に美しく塗ることは簡単だが、綺麗に塗装したあとにわざと汚して、オペラ座に受け継がれてきた歴史の重みを表現している。使い込んだ風合いを出すために、ブラシでダメージを与え、色ムラを作り、傷をつけるなどの加工をしている。

劇中劇「ハンニバル」は、架空のオペラである。冒頭ではポスターが登場し、第1幕最初のリハーサルシーンも印象的な作品だ。部屋のコンセプトである、歌姫クリスティーヌが舞台後に一息をつく楽屋のイメージに飾るのにふさわしい額入りポスターだ。作品が上演された当時のものとして絵が描かれ、こちらの額縁も時代を感じさせるエイジング加工がされている。

 

地下の湖に棲むオペラ座の怪人が呼ぶ

『オペラ座の怪人』といえば、仮面。劇団四季の公演で怪人役の演者が実際に着けた仮面と同じものが作られ、飾られている。何名か演じているキャストの誰か、は公表されていないので、「もしかしてあの人かも?」とファンの間でも想像が膨らむ。

パリ・オペラ座の地下に広がる湖に住む怪人は、クリスティーヌを鏡から呼び寄せ、隠れ家へと連れていく。コンセプトルームでは、バスルームの鏡に仕掛けを施し舞台と同じく鏡の中に怪人が現れるシーンを表現する。電気を消して真っ暗にすると発光するようになっていて、暗闇に怪人の姿が浮かびあがるのは驚きの発想だ。

 

劇団四季とのコラボレーション

「メズム東京」は劇団四季とのコラボレーションの可能性を探り、神奈川県あざみ野市にある四季芸術センターに出向いてイメージビジュアルを見せたという。初見の機会でGOサインの好感触を得て、その絵に向かってどのように具体的に表現するかを劇団と詰めていき、構想から半年以上かけてコンセプトルームが出来上がった。クリエイティブディレクターの小泉堅太郎さんに、アイデアのきっかけを伺った。

「『オペラ座の怪人』とのコラボレーションをするには、ホテル内で実現するのに違和感がない客室がよいだろう、と考えました。主人公の印象が色濃く残る場面であり、舞台で観たイメージがその場に重なって思い出される、というと鏡から怪人に引き込まれる直前のクリスティーヌの楽屋なら表現しやすい、とインスピレーションが降りてきました。部屋であれば、ベッド、アメニティがあっても自然でおかしくありません」

「劇団四季×mesm」のロゴ入りアメニティポーチ(非売品) *通常の部屋は、本型のアメニティボックス

「イメージが頭に思い浮かんでから、劇団に提出したイメージビジュアルは、約1週間で描き上げました。『オペラ座の怪人』は、親に連れられて子どもの頃に観て、留学していたイギリスでも観劇し、仕事、プライベートを入れて通算すると7〜8回は観ている計算になります。

私は舞台、映画などのエンタテインメント全般を好んで観ますが、『オペラ座の怪人』は作品自体が面白くて素敵だな、と思います。今回のコラボレーションで、演出や舞台裏の色々な話を劇団四季の方々に直接伺うことができ、なぜこのストーリーがずっと語り継がれるのか、その答え合わせをした気がします。子どもの頃には分からなかった場面も、大人になると違う捉え方になり、通う度に別のキャストで観ると新鮮な発見があります。ファンの方々が何回も通うのがわかる気がします。個人的にもいろいろと愉しませてもらいました」

部屋までランタンで案内

コンセプトルームは、サイドテーブルとソファ、シーツも他の部屋と異なり、壁紙もすべて張り替えている。ウェルカムスイーツは、フランス産スパークリングワインと共にアーモンドとグラン・マルニエの風味豊かなフランス伝統菓子「パン・ド・ジェーヌ」を提供。物語の舞台となった19世紀オペラ座の楽屋の差し入れをイメージし、「愛しのクリスティーヌへ」と書かれたカードを添えて特別に用意される。

ウェルカムスイーツのフランス伝統菓子

四季劇場と東京の街並みを見渡すシティービュー

 

<Information>

■メズム東京、オートグラフ コレクション 
https://www.mesm.jp/
東京都港区海岸1-10-30 

詳細、予約はこちら
https://www.mesm.jp/news/conceptroom.220217.html
電話:03-5777-1111(代表) 
メール:reservation@mesm.jp

 

photo by 竹崎恵子(Keiko Takezaki)
旅&ライフスタイルをメインに、雑誌、PR誌等幅広い分野で活動中。海外は25ヵ国以上を撮影。

text by 鈴木陽子(Yoko Suzuki)
CS放送舞台専門局、YSL BEAUTY、カルチャー系雑誌ラグジュアリーメディアのマネージングエディターを経て、エンタテインメント・ザファースト代表・STARRing MAGAZINE編集長。25ヶ国70都市以上を取材、アーティスト100人以上にインタビュー。

 
 
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