主演・三浦涼介がギリシャ悲劇の最高峰、『オイディプス王』に再び挑む! 

約1年半ぶりに甦る、ギリシャ悲劇の最高峰!

古代ギリシャの三大悲劇詩人の一人である、ソポクレスが紀元前に執筆した『オイディプス王』。2500年間にわたって人々を惹きつけてやまない、ギリシャ悲劇の最高峰傑作だ。

この作品を、2023年7月にパルテノン多摩がリニューアルオープン1周年記念として上演。主役のオイディプス王を三浦涼介さんが演じた。1年半ぶりの再演となる今回も演出を手がける演出家・劇作家の石丸さち子さんは、三浦さんを絶賛して言葉を寄せている。

「俳優として無垢に大胆に、自らの命ごと舞台に捧げていたから、劇場に日々鮮血が滴り止まぬようだった。それでいて、美しく、強靱だった」
(*コメント抜粋)

2025年も主役として続投、さらなる期待がかかる三浦涼介さんに、『オイディプス王』に再び挑む心境をインタビューした。


オイディプス王という人間

初演で、オイディプスという役を掴めましたか。

誰かの中に答えはあるのかもしれないけれど、一方で誰も答えを知らない、どの作品でもそうだと思うんです。

もちろん過去に演じられた方の上演はなるべく観るようにして、脳にも目にも耳にも入れておきたいと思っています。あの方はこうだった、ということも踏まえて自分で役を作って(演出の)石丸さんともお話し、共演する皆さんと生まれてくることも沢山あります。

役は想像で創ることが多いので、正直なところ分からないのですが、もしかして僕自身が思うオイディプスを掴めていなかったのかもしれません。石丸さんは、ずっと僕に「三浦が考えるオイディプスでいいんだよ」と言ってくれていたように思います。

ただ、前回はあまりにも重責を感じ、僕が思うオイディプス像にたどり着く術(すべ)は無かったように感じます。

精神的にも肉体的にもボロボロで、本当にスタッフ、キャストの皆さんに支えてもらって何とか舞台に立てました。絶対にこの人たちを後悔させたくない、お客様に舞台を楽しんでもらいたい、三浦のオイディプスで良かった、と思ってもらえなければダメだ、という強い思いがありました。

劇場に入り、衣裳を着けてヘアメイクをして頂いて、セットの一番上に立った瞬間から、本番が一瞬だったんです。そこはぐっと入り込めたのかな、という風にも感じています。

ご覧になった方々には、私の想像するオイディプス王ではなかった、そういう形もあるんだ、と色々な受け止め方があると思います。オイディプス王という存在を答えがないものとし、人が想像するものでしか無いとするならば、「もしかしてこういう人間だったかもしれない」というリアリズムの扉を叩くことができたのではないか、と思っています。

今回の再演は挑戦でもあり、改めて生まれることや感覚を大切に、繊細に演じたいと考えています。


“魅せる” ギリシャ悲劇

ギリシャ悲劇『オイディプス王』の魅力は?

僕は自分が演じているこの作品しかギリシャ劇は経験していないけれど、この上演は全体的にシンプルだと思います。

例えば、舞台セットはシンプルで繊細なのにダイナミクスがあり、力の押し引きの具合が絶妙だと思います。全員で創り上げた『オイディプス王』の世界観に瞬時にしてぐっと惹き込まれると思います。

それは照明の力であり、衣裳やヘアメイクの妖艶さでもあり、台詞を聞くだけではない「観る」面白さがあります。最新のものをお見せする、ということではなく、凄くシンプルだけれど、お客様に伝わる魅力がある作品だと感じています。

ただ長時間喋られても、観る側も体力が要るし、聞いていられないですよね(笑)。この『オイディプス王』は休憩なし約2時間の上演で、魅力がいっぱいです!


ギリシャ劇を演じるのにふさわしい、神殿の名前を冠した「パルテノン多摩」で上演


東京公演は、初演と同じパルテノン多摩。劇場で演じた印象は?

初演の際に、まだセットが組まれていない時に、劇場で恐る恐る声を出してみたんです。マイクはつけていなかったのですが、とんでもない程のホールの反響に、一気にテンションが上がりました! いろんな思いがあり、不安も沢山あったのですが、ここで『オイディプス王』ができるんだ、よし自分はここに立つんだ、と覚悟を決めたのを覚えています。

再演でまた舞台に立たせて頂けることは、本当に光栄なことです。素敵な劇場ですし、響きが凄いですね。集中していないと自分の声を聞いてしまう位に、綺麗な反響だと感じます。いい劇場だね、座り心地もいいよね、といったこの劇場が大好きなお客様の感想を聞くと、そういうことも含めて舞台に立てることに再びワクワクしています。


名演出家・劇作家、石丸さち子さんの凄さ


三浦さんから見た、石丸さち子さんの凄さは?

凄いですよ、もう凄いしかないです。

例えばお芝居でこういう言い方、動きはどうだろうと伝えると、一度演出で決まったにも関わらず「やっぱり涼介が考えていた方がいい」と、後で連絡を頂くことが何度もありました。僕は自分のやりたいように演じたいという訳では決してないのですが、そういうところが面白いと感じています。石丸さんと一緒に創っていく感覚なんです。

僕は石丸さんに出会っていなかったら、芝居をここまで好きになることはなかったと思います。本当に愛情しか感じていません。改めてお芝居の楽しさ、厳しさ、恐さ…いろんなことを教えて頂きました。演劇を心から愛していて、“放っておかない、私を信じてついてきてくれれば大丈夫” という風に僕を奮い立たせてくれます。

石丸さんのやりたいことを具体的に我々が身体と言葉を使って演じる、ということに留まらず、「あなたの良さはここ、引っ張ってあげるからついてきなさい」というパワーを感じています。石丸さんが僕自身を信じさせてくれて、だからこそ前回の初演で改めて芝居が本当に楽しいと思えました。

僕が、何を石丸さんに渡せているかは分かりません。けれど石丸さんの夢は僕も叶えたいし、せっかく出会えたのだから、役者としても人間としても自分にできることを精一杯やりたいなと思います。


イオカステ役・大空ゆうひさんとの共通点とは?


初演に引き続き、イオカステ役で大空ゆうひさんが出演されます。共演の感想をお聞かせください。

イオカステ:
先王ライオスの妻でオイディプスの母、のちにオイディプスの妻となる


前回は、僕に余裕がなさすぎて。気がついたら始まって気がついたら終わっている状態で、皆さんとほとんどお話が出来ませんでしたが、大空さんとは、取材などでお互いの気持ちを聞く機会がありました。

分からないのですが、お互い何か似ている部分がある気がするんです。だから、今回の公演で改めて話してみて、それが何なのか答え合わせしたいなと思っています。理解しないと一歩も進めない、そこが凄く似ている気がします。

一緒に演じてみて、感じ合うこと、溢れてくる思いがあったり、今日はこういう風に考えているのかな、と思うこともありました。芝居というのは不思議なもので、毎日同じことをしているのに、いろんなものを感じるんです。感情の押し引きがあって、お互いの空気を感じながら、そういうところで凄く繊細に舞台で役を生きられた気がします。彼女だったからこそ、僕をとても支えてくださったと感じています。

この言い方が正しいのかわかりませんが、お芝居は嘘であると思っていて、僕は理解したふりで芝居ができず、ちょっとした引っ掛かりで全然前に進まないということがあります。お互い、嘘をつけないところが似ているように感じています。

二人で一緒に、嘘のない芝居を作りたいな、と思います。


『オイディプス王』に射し込む一筋の希望


三浦さんが感じる、物語の魅力は?

僕はオイディプス王の選択に、どこか1mmでも希望のようなものを残して欲しい、そういう風に映るように最後を創って欲しいと石丸さんに話しました。それが石丸さんと一緒に創った初演なので、再演でどういう形になるか分からないのですが、人間としての生き様、生きることに可能性や希望を感じました。それが、僕が『オイディプス王』に感じる魅力です。


取材中のエピソードは、編集後記まで!

<Information>

『オイディプス王』

作:ソポクレス 
翻訳:河合祥一郎

演出:石丸さち子

出演:三浦涼介 大空ゆうひ 岡本圭人 浅野雅博 外山誠二 大石継太 今井朋彦 ほか

【東京公演】
日程:2025年2月21日〜24日
会場:パルテノン多摩 大ホール

【大阪公演】
日程:2025年3月1日 
会場:SkyシアターMBS

公式サイト https://www.oedipus.jp/
公式X @oedipus2025

企画・製作:パルテノン多摩共同事業体

 

photo by 花井智子(Tomoko Hanai)
日本女子大学文学部卒業 ポートレート、舞台を中心に撮影。2020年表参道MIDORISOギャラリーにて個展「LiLee」開催。

text by 鈴木陽子(Yoko Suzuki)
CS放送舞台専門局、YSL BEAUTY、カルチャー系雑誌ラグジュアリーメディアのマネージングエディターを経て、エンタテインメント・ザファースト代表・STARRing MAGAZINE 編集長。25ヶ国70都市以上を取材、アーティスト100人以上にインタビュー。

 
 
 

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