ミュージカル『ラブ・ネバー・ダイ』クリスティーヌ役の真彩希帆にインタビュー! 〜音楽の天使が芸名の私を高みに引き上げる歌声〜

オペラ座から姿を消して10年 ― ファントムが再び現れる

アンドリュー・ロイド=ウェバー『オペラ座の怪人』の後日譚として生まれたのが本作品。『ラブ・ネバー・ダイ』は、2010年ロンドンで開幕し、日本では、2014年に日生劇場で待望の初演。舞台は熱狂的な反響を呼び、2019年にも再演され、2025年は日本で3回目の『ラブ・ネバー・ダイ』の幕を開ける。

新たな『ラブ・ネバー・ダイ』は、ファントム、クリスティーヌがトリプルキャストでの上演。今回、初参加となる、真彩希帆(まあや・きほ)さんにインタビュー。役の声について、舞台に立ち続ける思いなど、たっぷりお話を伺った。


音楽の天使が芸名の「真彩希帆」に降りてくる瞬間

真彩さんは、宝塚歌劇団トップ娘役時代と退団後に『ファントム』の作品でクリスティーヌ役を演じられました。『ラブ・ネバー・ダイ』のクリスティーヌ役は、どんなイメージですか。

今回のお話の設定は、怪人が姿を消した10年後の話なので、クリスティーヌ自身にも色々な感情があるのだと思います。クリスティーヌ役が少女なのか、大人の女性なのか、そこはモーリー・イェストンの作品『ファントム』と違う点だと考えています。

夢見る少女ではなく、どうしてこうなってしまったのだろう、という複雑な思いが歌声に滲み出て、それでいながらファントムが思い描くいつまでも変わらない歌声を、お客様に届けたいですね。

真彩さんとクリスティーヌとの共通点があるとすれば?

音楽が好き、そして自分の意志で歌っていない感覚。なんとお伝えすればよいのか言い方が難しいのですが、音楽が降ってくる感覚です。クリスティーヌがそう感じているかは分かりませんが(笑)。

本名の自分、芸名の「真彩希帆」の力だとここまでは無理だろう、というところまで音楽の天使か、舞台の神様のような存在が役を演じる間、引き上げてくれて歌えると感じる時があります。

自分の中に存在していて、助けてもらい、「ありがとうございます!」「凄い! 歌えた!」と、いつも感謝しているんです。どの作品も、こんな声が自分には出るのか、こんなことが感じられるのか、と意識が到底及ばないところで、役に生命を吹き込んでもらっている気がします。

今回の舞台も、何か音楽の天使が降りてくる瞬間が、沢山ありそうですね。

そんな瞬間に出会えたらいいな、と思っています。

アンドリュー・ロイド=ウェバーの曲の印象は?

この音とこの音を組み合わせると、こんなハーモニーが生まれるのか、という驚きと発見があります。美しさと妖しさも感じます。

日本で初演される以前から、歌詞も覚えられるほどに英語版をずっと聴いていました。歌うのは難しいとは思いますが、大好きな曲なので、取り組めることは本当に嬉しいです。

特に、『ラブ・ネバー・ダイ』はドラマティックな作品ですね。

旋律がドラマティック、さらに衣裳や舞台美術の雰囲気と相まって、ゴージャスで魅力的な空気感の作品に感じます。

クリスティーヌ役の大ナンバー、真彩さんが歌う♪「愛は死なず(Love Never Dies)」にも期待がかかります。

歌ったことはあるのですが、作品の中で役としてお芝居で歌うのと、コンサートで歌うのでは、同じ曲でも全く別物になるのではないかなと思っています。どんな風に歌うのか、今は自分自身が一番楽しみにしています(笑)。

役の声は、内面から、あるいは発声のテクニックからアプローチしますか?

まず、作品で必要とされている音域があるので、技術的にどのように役の声に落とし込むか、そこにどういう内面の表現を加えていきたいのか、という両方を考えます。どちらも必要だと思います。

人はそれぞれ同じ声ではない、同じ音域だったとしても、声帯は人によって違います。だから、役の声をいつも考えて、感じながら出すようにしています。

ご自身の本来の声質は?

本来の持ち声は、メゾやアルトのような、ハスキーで低い声です。宝塚歌劇団に入る前は男役を目指していた程でソプラノではないので、役の声を作っていかなければならない、それが楽しみでもあります。これまでの作品の経験が、いつも新たな役の声に挑戦する際の引き出しになっています。

制作発表の歌唱では、鈴を転がすような美声が印象的でした。

ありがとうございます。鈴を転がすような声、とおっしゃって頂くことがあるのですが、「その声を求められている役の作品が多いから」と自分では思っています。だから、天使の歌声と言われれば、役の声だから、という感覚ですね(笑)。


制作発表で歌唱披露

制作発表会見 撮影:渡部孝弘

トリプルキャストについては、いかがでしょう。

同じ役を演じて、拝見できることが嬉しいです。歌劇団の時代はずっと1人で同じ役を演じますし、退団後もシングルが多く、私にとってはそれが普通でした。今回とても楽しみにしています。共演したことのある笹本玲奈ちゃんもお互い初役ですが心強く、自分が想像できないことを皆さんから学ぶのだと思います。

制作発表では、三者三様のクリスティーヌの歌唱でした。

歌声は、やはり人によってそれぞれ違うんだな、と改めて思いました。同じ楽曲でも、ひとりひとり声帯が違うので声の質も変わりますし、どんな本番の舞台になるだろうと想像が膨らみました。

ファントム役、ラウル役の共演者の方々について、お聞かせください。

ファントム 市村正親/石丸幹二/橋本さとし (交互出演)
ラウル・シャニュイ子爵 田代万里生/加藤和樹 (交互出演)

市村正親さんは、いつも優しくして頂き、お話させて頂いています。石丸幹二さんは、舞台やコンサートでもご一緒させて頂き、いらっしゃると安心感があります。橋本さとしさんは、本日の制作発表で初めてお会いしました!(作品初参加で)「新人賞をとりたい(総ナメにしたい)」とおっしゃっていたその発想が思いもつかず、面白くて印象的でした(笑)。私も初参加ですが…というより、私はまだこの世界でも新人です(笑)。

加藤和樹さんは、『ファントム』の作品でもご一緒し、趣味も似ているので仲の良い友人という感覚です。だから、制作発表で歌った曲中でラウルがファントムに嫉妬して腕を掴んでクリスティーヌが嫌がるところなどは、そこは完全に演技に徹するようにしました(笑)。気心がしれているので、夫婦役は演じやすいように思います。

田代万里生さんは、ラジオドラマで初めてお仕事をご一緒し、イメージ通りの優しくてユーモアのある方という印象。今回の共演も、とても楽しみにしています。

制作発表で披露された、アンサンブル歌唱 ♪「懐かしい友よ」の感想は?

(歌唱披露) ♪「懐かしい友よ」 クリスティーヌ役・真彩希帆 、ラウル・シャニュイ子爵役・加藤和樹、メグ・ジリー役・星風まどか・小南満佑子、マダム・ジリー役・春野寿美礼

当日初めて声を合わせたのですが、お稽古が始まったら皆さんの声と合わせて変化が起こるのでは、と楽しみにしています。

春野寿美礼さん、星風まどかさんは同じ宝塚歌劇団出身ですね。

オサさん(春野寿美礼)は歌劇団を退団直後の作品でご一緒し、色々とお話させて頂いています。かなめ(星風まどか)は、同時期にトップ娘役を務めたこともあって、仲良くしています。

『ラブ・ネバー・ダイ』のクリスティーヌ役は、息子を持つ母親の役です。

今回、実は凄く楽しみなのが、グスタフ(クリスティーヌの息子役)と一緒に歌えることです。

私は5人姉妹で、妹たちが生まれて子育てをする母親や姉の姿を見て、肌で感じて、自分も子どもが大好きです。だから、母親役を演じるのは、むしろ嬉しいです(笑)。

もちろん大人から学ぶことも沢山あるのですが、子どもから学ぶことは本当に凄い、と思っています。子どもがいる役は経験していますが、休憩時間などのちょっとしたやりとりにも、思いもかけない発見があります。一緒に歌って、今度は自分は何を感じるんだろう、と今から非常に楽しみです。

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夢は、エンタテインメントを繋いでいくこと

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<Information>

ミュージカル『ラブ・ネバー・ダイ』


期間;2025年1月17日〜2月24日
会場:日生劇場

作曲:アンドリュー・ロイド=ウェバー
演出:サイモン・フィリップス

キャスト:
ファントム 市村正親/石丸幹二/橋本さとし (交互出演)
クリスティーヌ 平原綾香/笹本玲奈/真彩希帆 (交互出演)
ラウル・シャニュイ子爵 田代万里生/加藤和樹 (交互出演)
メグ・ジリー 星風まどか/小南満佑子 (交互出演)
マダム・ジリー 香寿たつき/春野寿美礼 (交互出演)
ほか

公式 HP
https://www.lnd2025.com/

 

取材エピソードの編集後記は、こちら

photo by 山崎あゆみ(Ayumi Yamazaki)http://ayumiyamazaki.com/
東京を拠点に建築、旅、人物と幅広いジャンルを撮影。

text by 鈴木陽子(Yoko Suzuki)
CS放送舞台専門局、YSL BEAUTY、カルチャー系雑誌ラグジュアリーメディアのマネージングエディターを経て、エンタテインメント・ザファースト代表・STARRing MAGAZINE 編集長。25ヶ国70都市以上を取材、アーティスト100人以上にインタビュー。

 
 
 

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