【レポート】ウィーン国立歌劇場 2025年日本公演 中谷美紀が公式アンバサダーに! 就任記者会見

中谷美紀 (俳優/ウィーン国立歌劇場2025年日本公演公式アンバサダー)
photo: Yuji Namba

今年10月、ウィーン国立歌劇場が9年ぶりとなる日本公演を行う。東京文化会館休館の前となる最後の大型オペラ公演であり、名門歌劇場の「引っ越し公演」は見逃せない貴重な機会だ。

ウィーン国立歌劇場 2025年日本公演 公式アンバサダーに、俳優の中谷美紀の就任が決定した。中谷さんはウィーン国立歌劇場管弦楽団及びウィーン・フィルハーモニー管弦楽団のヴィオラ奏者を夫にもち、オーストリアと日本の2か国を拠点に活躍中。俳優としての活動に加え、自身でもコンサートへの出演やSNS、文筆活動を通してクラシック音楽や舞台芸術の魅力について積極的に発信している。ウィーンにも音楽的にも文化的にも造詣が深くアンバサダーに最も相応しいと公演主催者よりお願いしたところ、すぐにご快諾頂いたそう。そんな中谷さんが今年4月から10月までの約7か月にわたり、ウィーン国立歌劇場の魅力を日本の観客に伝えていく。

2025年4月4日、品川プリンスホテル「プリンスホール」にて、就任記者会見が開催された。当日の登壇コメントと共に、魅力的な上演作品を紹介する。(*以下、抜粋)


ウィーン国立歌劇場の魅力

中谷美紀(以下、中谷)「ウィーン国立歌劇場は、退屈で平凡な日常を忘れさせてくれる心の拠り所であり、現代を反映する鏡のようなもの。ウィーン市民にとっては、日常的に足を運ぶ場所です。日常に寄り添いながら、日常からのエスケープでもある、最高のエンタテインメントです」「今回の2演目というのは、男女のいざこざを面白おかしく描いているけど、それでありながら人間の生きる有り様、本質をありありと描き出しています」「ウィーン国立歌劇場は、私の夫も所属しているウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の音楽をオペラの伴奏として聴けるということも贅沢だと思います。歌手の呼吸に合わせてピアニッシモでさえその声を潰さないように天井桟敷まで届かせるような、皆んなで一体となってドラマを作り出す魅力があり、世界屈指の指揮者や歌手の方々がこぞって出演したいと願うような歌劇場です」

 

<演目>

W.A.モーツァルト作曲 『フィガロの結婚』
指揮:ベルトラン・ド・ビリー
演出:バリー・コスキー

人気演出家のバリー・コスキーによる人物描写とスピーディな展開が評判の2023年に初演された新プロダクション

中谷「今年3月に、まさにバリー・コスキーさん演出の『フィガロの結婚』を拝見しました。友人のソプラノ歌手でアルマヴィーヴァ伯爵夫人を歌うハンナ・エリザベス・ミュラーさんからお誘いを受けて、喜び勇んで劇場にまいりました。これまで何度も観劇した作品ですが、今回の演出は、ロココ調のセットの中に、当時の雰囲気が残りながらも現代的な衣裳で、今の時代にも即しています」「近年のオペラ歌手の皆さんは、本当に演技力が優れていらっしゃって、繊細なお芝居をされます。心情表現を大切にされていて、それが歌声に反映され、ドラマの緩急があり、ひしひしとこちらに伝わってきます」

photos: Wiener Staatsoper / Michael Poehn

 

R.シュトラウス作曲 『ばらの騎士』
指揮:フィリップ・ジョルダン
演出:オットー・シェンク 

1911年の初演以来、ウィーンで1000回以上上演されている『ばらの騎士』。そのうち400回以上は名演出と名高い、今回上演のオットー・シェンク演出によるプロダクション

中谷「ウィーン国立歌劇場の『ばらの騎士』は映像では拝見していますが、今回が初めての舞台観劇になるので楽しみです。若い伯爵から恋心を抱かれて元帥夫人が道ならぬ恋に興じている、日常に不満のある方ならば舞台で昇華されるカタルシスを覚えるかもしれません(笑)。一方で、元帥夫人はいつかこの若者が自らの元を去ってしまうのではと感じて、憂いと葛藤を抱えています。とても美しい最後の三重唱は、銀のばらの献呈を仰せつかった青年の伯爵とお互いに一目で恋に落ちた令嬢の二人の戸惑い、そして元帥夫人が失われゆく愛と恋人の幸せを願う、三者三様の思いが歌われる素晴らしい歌です。同時に、時代が終わりを迎えて、移り変わることへの諦めと受容も感じられます」

*ウィーン国立歌劇場の同プロダクション6月上演を、中谷さんが日本公演の前に今後レポート発信予定

photos: Wiener Staatsoper / Michael Poehn

 

中谷「オペラもまた時代に即しているかというと、もしかして時代遅れなのかもしれません。でも、だからこそ、失われていくものを日本のお客様にもお伝えしたい。AIという取って代わられるかもしれないという存在があり、生の歌声は人間の極限と感じます。人体による極限の声がいつ失われるかもしれない恐怖に怯えながら、その儚い歌手生命をかけて舞台に立たれているかと思うと…(涙ぐむ)。AIではない生の歌声のオリンピック、勝敗のないオリンピックと私は呼んでいるのですが、皆様にも今ぜひ味わって頂きたいと思います」

photo: Yuji Namba

photo: Yuji Namba

長い伝統とオペラの上演の質において世界屈指のオペラハウス、357年の歴史を誇るウィーン国立歌劇場
photo: Wiener Staatsoper / Michael Poehn

中谷「ウィーンでも、本当に席の種類によって違うのですが、美しいイブニングドレスの方もいれば、未来の歌劇場のお客様となる若い方でファストファッションのリトルブラックドレスやダメージジーンズの方もいる。私はそんな姿を見るのが本当に大好きです」「私自身も今から何を着ていこうかと楽しみです」

photo: Yuji Namba

総勢約340名のオペラ引っ越し公演。この貴重な機会にぜひ!

<Information>

ウィーン国立歌劇場 2025年日本公演

日程・料金詳細はこちら

公式サイト
https://www.nbs.or.jp/stages/2025/wien/index.html

 

text by STARRing MAGAZINE編集部

 
 
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