ミュージカル『キングアーサー』出演の浦井健治が、いま舞台に思うこと(後編)

あのアーサー王伝説がミュージカルに。しかも、音楽はグルーヴ感溢れるフレンチ・ロック! 2023年1月より上演する話題のミュージカル『キングアーサー』で主役のアーサー役を演じる浦井健治さんにインタビューした。前編は今回の作品や音楽、カンパニーについて、後編ではエンタテインメントへの思いなども伺った。

ミュージカル『キングアーサー』は、『1789-バスティーユの恋人たち-』『太陽王』『ロックオペラ モーツァルト』『CASANOVA』などのヒット作品で知られるドーヴ・アチアが音楽・脚本・作詞を手掛けたフレンチミュージカルの日本版。演出は、『デスノートTHE MUSICAL』韓国プロダクションにも携わり、2020年に韓国ミュージカル界最高峰である韓国ミュージカルアワーズで演出賞を受賞した、いま韓国演劇界で最も注目される新進気鋭の演出家オ・ルピナが担当する。

メインキャストは、浦井健治をはじめ、伊礼彼方、加藤和樹、太田基裕、平間壮一、小南満佑子、宮澤佐江、小林亮太、東山光明、石川禅、安蘭けい。2022年8月に行われたプレイベント(製作発表)では、圧倒的なパフォーマンスで会場を魅了した。*敬称略 Wキャストは五十音順

ミュージカル『キングアーサー』の舞台に挑む、役者・浦井健治!(前編)は、こちら


信頼できるメンバーと、今後に繋がる作品を目指して

この作品を未来でも繰り返し上演されるよう目指している、とプレイベント(製作会見)のご挨拶で社長からのお言葉(主催・企画制作 ホリプロの菅井敦代表取締役社長)も頂きました。

例えば、『デスノート THE MUSICAL』の舞台もキャストを変えて上演が続けられ、海外のプロダクションにもなりました。数々の作品が世の中に生み出され、舞台が製作され続けていることは、本当に凄いことだと思っています。

『キングアーサー』日本版のプロダクションが、ますます楽しみです。

オリジナルのフランス版はかなりショーアップされたミュージカル作品ですが、日本版はダンスやアクロバットに特化して見せるというより、そういった場面は凝縮して、作品全体で内包した芝居の部分を紡いでいくのではないかと思っています。

(『キングアーサー』韓国プロダクションの演出も手がけた)オ・ルピナさんが演出を担当されるので、韓国版に近い要素もある気がします。台本をまだ受け取れていないので、どんな風になるのか、想像をするだけでも楽しみですね。

歌も、芝居も、アクションもある、ハードな舞台ですね。

新感線☆RS『メタルマクベスdisc3』の舞台をやらせていただいた時にも、殺陣、歌、芝居とかなりハードで、シェイクスピアの芝居をメタルでやるという経験を、今回の作品に向けて思い出したりもしています。

その体験があるからこそ、自分の中で「よし」と思える部分もあるので、あの経験をさせてくれた演出のいのうえひでのりさんには感謝しています。一方、あの大変さを知っているがゆえに、恐怖を感じて、臆病になる部分もあります。でもそれ以上に、自分はシングルキャストでWキャスト一人一人との化学反応を他の方以上に面白く感じられるはずなので、作品をより豊かにしていく役割の一端を担えるように、この役を務めていきたいと考えています。

作品はいかがでしょう。プレイベント(製作発表)で曲を披露した感想をお聞かせください。

この作品は群像劇として、一人一人の正義や愛の形、人間の憎悪や狂気といったものが、運命に翻弄される姿を通して描かれていきます。とても分かりやすくもありますし、人が変わっていく様(さま)がシンプルな形で描かれている作品だと思います。

いわゆる聖剣エクスカリバー、アーサー王伝説は世界中で数多くの方が知る物語です。それをフレンチ・ロックの音楽に乗せた現代的なミュージカルとして、アクロバットや殺陣、ダンスといったもので紡いでいく、かなりショーアップした作品だと思うんです。

でも、そこに引っ張られ過ぎず、物語を大切にすることが今回の演出を手がけるオ・ルピナさんの意志だと思います。その意思に添えるようにやっていきたいし、今回披露した曲にはそれぞれの役の思いが込められた楽曲だったと思います。

楽譜をご覧になった印象は。

ロックでかっこいいですね。アタック(歌い方のテクニック)など、ロックの歌唱法に寄せていくようになると思います。

殺陣については、どんな思いがありますか。

太刀(たち)に思いを乗せる、という言葉がありますが、自分一人ではできない。セリフと一緒で、相手の受け身があり、両方が分かり合った上で何を表現するかというところでの演技だと思います。

その殺陣に、感情や思い、役の人生が乗った時に、潔い純粋な剣の形が舞台にたくさん表現され、お客様へもその思いが伝わるのだと思います。剣には、その人自身が出ると感じています。

 

エンタテインメントの仕事について、いま考えること

舞台が中止になるなど、さまざまな経験をされ、色々な思いがあると思います。エンタテインメントに携わるご自身の職業について、現在、考えていることはありますか。

本当に大変な世の中で、舞台製作においても、企画段階からの労力や大変さに思いを馳せます。エンタテインメントを愛して、そこに心の豊かさを感じながら、世の中に出していこうとする心意気がとても素敵だし、素晴らしいことです。

いまのエンタテインメントは、お客様もリスクと向き合わなければいけないのが現状です。いずれ状況は変わっていくかもしれませんが、今の状況で我々は一体何ができるのか、と自問自答の繰り返しです。

僕が印象的だったのは、ある空港で、おそらく自分たちが応援しているコンサートが中止になってしまったファンの女の子たちの姿を見た時でした。同じフライトに並んでいた10代と思われるその方たちは、なんとなく元気がないというか、いろんな思いを我慢しているようでした。まるでそうすることがファンとしての愛であり、エンタテインメントに対しての礼儀だと思っているように黙ってうつむく姿を見た時に、僕は何もできませんでした。

今まで、舞台を1回1回お見せする、という思いが第一前提としてありますが、何もできないという状況に置かれた時に、どうしても責任というものを考えてしまいます。

もちろん、状況が緩和してお客様がそのような思いをしない世の中に早くなって欲しいけれど、どうしたら良いのか、ということについてはその都度更新していく必要があると思います。

交通費や滞在のための旅費、あらゆるリスクを超えてそれでも求めてくれる情熱と、応援してくれる方々の優しい気持ちというのは、僕らにとってとても大きなエネルギーになっています。「だったら!」という風に。

僕ら演者も今まで以上に、気持ちも強くなっている気がします。皆んながこの刹那な瞬間を生きている気がします。

今回の『キングアーサー』のチームも、カンパニーの力みたいなものを問われつつ、その力が確実に上がっている、と感じていただけるようにしなければいけないと思っています。

 
 

ミュージカル『キングアーサー』の舞台に挑む、役者・浦井健治!(前編)は、こちら

ミュージカル『キングアーサー』

<キャスト>

アーサー:浦井健治
メレアガン:伊礼彼方/加藤和樹 (Wキャスト/五十音順)
ランスロット:太田基裕/平間壮一 (Wキャスト/五十音順)
グィネヴィア:小南満佑子/宮澤佐江 (Wキャスト/五十音順)
ガウェイン:小林亮太
ケイ:東山光明
マーリン:石川禅
モルガン:安蘭けい

碓井菜央 加賀谷真聡 工藤広夢 当銀大輔 長澤風海・加藤翔多郎 長澤仙明 半山ゆきの・新井智貴 大井新生 大場陽介 岡田治己 加藤さや香 鹿糠友和 鈴木百花 高島洋樹 高橋伊久磨 高橋慈生 田口恵那 東間一貴 内木克洋 長嶋拓也 永松樹 西尾真由子 花岡麻里名 藤本真凜 MAOTO 松平和希

(五十音順)

<スタッフ>

日本版台本・演出:オ・ルピナ

翻訳・訳詞:高橋亜子
音楽監督:竹内聡
振付:KAORIalive
美術:二村周作
照明:高見和義
音響:山本浩一
映像:上田大樹
衣裳:前田文子
ヘアメイク:宮内宏明
擬闘:栗原直樹
エレクトロニックミュージックデザイン:ヒロ・イイダ
歌唱指導:やまぐちあきこ
演出助手:河合範子
舞台監督:徳永泰子
稽古ピアノ:中條純子
演出家通訳/台本下訳:キム・テイ

<東京公演>
期間:2023年1月12日(木)~2月5日(日)
会場:新国立劇場 中劇場
主催・企画制作:ホリプロ

 <群馬公演>
期間:2023年2月11日(土・祝)~12日(日)
会場:高崎芸術劇場 大劇場
主催: 高崎芸術劇場(公益財団法人高崎財団)

<兵庫公演>
期間:2023年2月24日(金)~26日(日)
会場:兵庫県立芸術文化センター  KOBELCO大ホール
主催:梅田芸術劇場/兵庫県、兵庫県立芸術文化センター

<愛知公演>
期間:2023年3月4日(土)~5日(日)
会場:刈谷市総合文化センターアイリス 大ホール
主催:キョードー東海

東京公演・ツアー公演のプリンシパルキャスト出演スケジュール、
最新のお知らせは公式HPまで。

公式HP
https://horipro-stage.jp/stage/kingarthur2023/

 

ミュージカル『キングアーサー』の舞台に挑む、役者・浦井健治!(前編)は、こちら

 

photo by 山崎あゆみ(Ayumi Yamazaki) http://ayumiyamazaki.com/
東京を拠点に建築、旅、人物と幅広いジャンルを撮影。

text by 鈴木陽子(Yoko Suzuki)
CS放送舞台専門局、YSL BEAUTY、カルチャー系雑誌ラグジュアリーメディアのマネージングエディターを経て、エンタテインメント・ザファースト代表・STARRing MAGAZINE編集長。25ヶ国70都市以上を取材、アーティスト100人以上にインタビュー。

 
 
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