元宝塚歌劇団雪組トップスター・壮一帆も出演! 雪組のレジェンドたちが集結して送る“最高の夢”、宝塚歌劇 雪組 pre100th Anniversary『Greatest Dream』
1924年に宝塚歌劇 雪組が誕生してからまもなく100周年を迎える。それに先駆けて、時代時代を彩った伝説のスターが大集結し、“最高の夢”をテーマにショーを届ける、宝塚歌劇 雪組 pre100th Anniversary『Greatest Dream』。豪華な出演者には元宝塚歌劇団雪組トップスターやレジェンドが名を連ね、雪組の歴史を振り返り、さまざまなヴァージョンで公演ごとに異なるステージを届ける。
現在、俳優として活躍中の元宝塚歌劇団雪組トップスター・壮一帆(そう・かずほ)さんは、自身の退団公演となった『一夢庵風流記 前田慶次』より「散らば花のごとく」、下級生時代に新人公演初主演の『愛 燃える-呉王夫差-』より「愛燃える」ほかを歌われる。思い出深い曲を披露する舞台への抱負を中心に、雪組や共演者への思い、現在の心境をインタビューした。
ご自身の宝塚歌劇団時代の代表的な名曲、「散らば花のごとく」「愛燃える」を歌われるそうですね!
「散らば花のごとく」は退団公演の曲なので、希望を聞かれ、候補として選びました。「愛燃える」は歌って欲しいとオファーをされ、意外で「そうきたか」と内心思いました(笑)。
雪組トップスターでいらっしゃった轟悠(とどろき・ゆう)さんが今回出演されない代わりに、当時の下級生時代の私が新人公演で轟さんと同じ役をさせていただいたので、この主題歌のソロ担当になったのだと思います。
当時をいろいろと思い出しますね。轟さんご自身も、難しい曲だとおっしゃられていました。私自身も実際に歌ってみて大変な思いをしたので、今回も、心して整えて準備しなければ歌いこなせない、と今から考えております。
ご卒業後、初めて歌いますか?
はい(力強く)。
どのようなお気持ちで、舞台に臨まれますか?
現役の時でも、新人公演以来、フルの尺で1曲すべてを歌っていないと思います。轟さんの代わりとして、しっかり歌わないと、という思いが何よりも一番ですね。
あとは、新人公演の時は初主演でまだ自分も若く、表現し切れなかったこともたくさんありましたので、今回は年齢を重ねて経験を得た歌い方ができればと思います。
宝塚歌劇団在団中のトップスター時代の経験、退団してからさまざまな経験したことすべてを盛り込んで、現在の“壮一帆”なりの「愛燃える」の曲を舞台上でしっかり表現し、ありのままお客様に聴いていただきたい、という気持ちです。
歌の技術的な面では、いかがでしょう?
新人公演の頃というのは、まだまだ歌いきるための体力がなかったと思います。歌は本当に体力を使いますし、まだピヨピヨしていた時代ですから(笑)。
新人公演は1度きりなので(*公演期間中、宝塚大劇場・東京宝塚劇場それぞれ1回の上演)、技術も体力も、力不足な面が大いにあったと思います。音程を取ることに必死で、歌った当時は、先生に教わった通りに歌わなければ、ということへの意識が強かったように思います。
轟さんが歌われていた音楽をベースに、自分の色をそこにどのように乗せるか、声量の大小、強弱の付け方、空気感の使い分けなどで、ほんの少しだけでも自分のオリジナリティを出すことができれば、と考えています。
非常に楽しみです。「散らば花のごとく」はいかがですか。ご自身の退団公演で、日本物の主題歌ですね。
昨年、久しぶりに歌う機会がありました。やはり、この曲も凄く体力を使う曲だと、歌ってみて感じました。
私自身、宝塚歌劇団を退団後、声のチェンジを進めている状態にあるので、常に男役をしていた頃の響きと、現在ではまったく違う響きになっていると思います。そのため、どのようにうまく融合するのがよいのか、と考えています。やはり、あの頃のような声は出せませんが、楽曲自体の魅力がマイナスの方向になることは絶対にしたくありませんので、プラスに変えられるような良い意味で違う歌い方ができれば、と思っています。
曲の歌詞は、当時の卒業公演に向けて、当て書き。今回はその歌詞をどのように歌いたいと思いますか?
確かに、退団する自分とシンクロした部分が歌にありました。あの頃を懐かしんで、歌いたいですね(微笑む)。
曲を歌うと、在団中を思い出しますか。フラッシュバックのような感じでしょうか。
私にとって思い出というのは、視覚よりも、嗅覚や聴覚といったものが大きいんです。曲のイントロを聴いただけでも、一瞬のうちに自分の体が思い出して声のポジショニングをするような感覚があります。おそらく「散らば花のごとく」「愛燃える」どちらの曲も、そうなると思います。
あとは、練習の段階を終えて、本番になって舞台に立ちライトを浴びた時にどのような感覚になるのか、私自身もとても楽しみです。
今回のコンサートならでは、の歌い方になりそうですね。
現在の壮一帆としての色が出せれば、素敵なことだと思っております。
雪組のレジェンド、総集結!
雪組出身の錚々たるレジェンドの皆さんが、学年を問わず、舞台に集結されます。
雪組時代を一緒に過ごした仲間と歌う場面や曲があれば、嬉しいですね。
逆に、私自身が客席から見ていた雪組のトップスターの方々と同じ(舞台の)板の上に乗ると思うと、身が引き締まる思いです。
歴代のトップスターの方々がほぼ全員出演と伺っているので、今回の一つの作品に雪組の歴史が詰まった舞台になりそうです。私も、その歴史の一部を担っていた、ということを改めて感じられる機会になりますので、そのような意味でも大変楽しみです。
在団中にコンビを組んだ、相手役の元雪組トップ娘役・愛加(まなか)あゆさんも出演されます。
心強いですね。ファンの方も楽しみにされていらっしゃると思います。一緒に出演できてよかったな、と思います。
彼女の出演回数の方が多いので、心細い思いをさせてしまう公演期間がありますが、私が出演する時にはしっかりと彼女の後ろをついていきたいと思います(笑)。
お二人のデュエットも?
きっと、あるのではないでしょうか。歴代の多くのコンビが出演してそれぞれに相手役の方がいらっしゃるので、私たちなりのカラーを出していけたらいいな、と考えています。
雪組時代は、自分のキャラクターが育った場所
壮一帆さんご自身にとって、宝塚歌劇団の雪組はどのような場所ですか。
具体的なことを言えば、自分自身のキャラクターが大きく変わったのが、雪組時代ですね。雪組に最初の組替え(*入団時は花組。雪組・花組への組替えを経験し、再び雪組に組替えでトップスターに就任)をするまでは下級生ということもあって最初は受け身な気質だったのですが、楽しいことや学ぶべきことは自分の足で見つけていかなければ、と良い方向に自身のキャラクターを雪組時代に変えてもらいました。
多くのことを気づかせて教えてくれた、当時の仲間と改めて共演できることを、心から嬉しく思っています。
趣向を凝らした、ヴァージョンごとに内容が異なるステージは、雪組を彩ったスターの日替わりメンバーによる夢のコラボレーション。全ヴァージョンに出演されますね。
大阪は全公演、東京は1公演、すべてのヴァージョンに出演いたします。本当に、出演者の方々が個性豊かですよね!
特に、共演を楽しみにされているキャストの方は、いらっしゃいますか。
退団して一路真輝(いちろ・まき)さんと共演させていただく機会があり、それ以来の同じ舞台に立たせていただくので、自分にとって大変嬉しいことです。ぜひ、厚かましくもお話しさせていただこうと思っています!
東京・大阪ともに、上級生で元雪組トップスターのレジェンド、平(たいら)みちさんと同じヴァージョンに出演ですね。
平みちさんは、私の雪組トップ時代にも観にいらして、お声がけしてくださいました。平さんにゆかりのある街、大阪府川西市は私の出身地でもあるので、また色々お話しできるのが楽しみです。
東京公演では、下級生の望海風斗(のぞみ・ふうと)さんも出演されます。
久しぶりで嬉しいです。二人とも在団中に花組、雪組と組替えで同じ組を経験しているので、お互い共通の話題でお喋りできます。
雪組カラーのイメージ
壮さん自身がイメージする、雪組のカラーは?
「質実剛健」です。轟悠さんがきちっとされるトップスターの方でいらしたので、初日の完成度が雪組は非常に高いと思っていました。その後、トップスターが時代時代で代わられても、当時の組のカラーは根本として受け継がれていったように思います。
今回は、日本物の公演主題歌がたくさんあると打ち合わせで伺いました。私がファン時代に拝見していた雪組トップスター、杜(もり)けあきさんご出演の『忠臣蔵-花に散り雪に散り-』に代表される、日本人とは、といった舞台や歌が多いのは、雪組の雰囲気にきっと合っているんだろうな、と思います。良い意味で、今回のショーは、重厚感のある舞台作品になるのではないでしょうか。
想像を遥かに超える、雪組のレジェンド感に満ちた舞台になる予感がします。日本物の経験は、ご自身の感覚に残っていますか?
自分の中にも、まだ感覚が残っています。なにより代々、雪組に受け継がれてきた教えが残っているからだと思います。
発声の仕方も雪組は、他組とは違うような感覚です。腰の座り方も凄いですし(笑)。だから、日本物だけではなく、『ベルサイユのばら』など洋物においても、歴史物や時代物の作品を演じたら、強い組だと思います。
雪組出身の皆さんに久しぶりに会うお気持ちは、いかがですか。雪組生の普段の雰囲気は?
とてもわくわくしています。皆んな賑やかなので、久しぶりに会ったら、うるさいでしょうね(笑)。雪組の雰囲気は、ほんわかしています。
日本物の歌の衣裳、演出にも期待ですね。
かつらなどを考えると、わかりませんが…日本物の衣裳かもしれませんよね(笑)。
壮さんご自身は、退団公演『一夢庵風流記 前田慶次』で慶次の愛馬・松風に乗って颯爽と登場して、「散らば花のごとく」の曲を歌われました。
あいつは(笑)もう里帰り(*外部に舞台美術が返却された意味)しました(へへへ、と笑う)。
現在の壮一帆・俳優の活動を経験して宝塚歌劇の舞台に戻る気持ち
ご卒業後、俳優として活躍し、再び宝塚歌劇OGとしてあの頃の作品を歌うのは、どのようなお気持ちですか。
宝塚歌劇OGそれぞれだと思うのですが、やはり原点に帰ることによって、現在の俳優業に関しての新たな気づきもあります。このような宝塚歌劇OGのイベントがあると、同じ世界のOGの方々と舞台でご一緒させていただくことによって、とても刺激を受けます。私自身にとっては、感謝すべき企画で、逆に前に進むための大切な機会と捉えています。
当時の男役の感覚は、自然と、思い出されますか?
体の細胞が覚えているので、やはり少なからず残っていますが、人によると思います。私の場合は、否定せずに、「上乗せ」していく感覚で良い意味で捉えています。人によっては、一度、そこを忘れないと、という経験をされている方もいらっしゃるので、本当に人それぞれだと思います。
目指す舞台姿
歌のトレーニングや、声の準備はいかがですか。
現役時代と比べて、発声はだいぶ変わりました。ボイストレーニングも教わって受けていますし、声はまだ発展途上の段階です。どうしても宝塚歌劇団時代の発声方法だけでは、他の舞台の楽曲に苦労することも多いので、場を与えていただきながら、普段から自分自身でも練習を積み重ねています。さまざまな楽曲に対応できるように、日々、声を作り上げている状況ですね。
観客、ファンの方々に向けて、何か伝えたいメッセージは?
あの頃の壮一帆さんが好き、現在の壮一帆さんが好き、とおっしゃってくださるさまざまなファンの方がいらっしゃって、私は当然だと思っています。
そこを自分がどの方向に寄せるのでもなく、現在の状態を素直に120%の力でお見せすることによって、皆様に喜んでいただけるのではないかと思っています。
そのため、変に自分をつくろったりせず、本当に良い舞台をお見せすることを念頭に、取り組んでいきたいと思っています。
紡がれし伝統が今、新たなる歴史を刻む。宝塚歌劇 雪組のレジェンドたちが送る“最高の夢”!
宝塚歌劇 雪組 pre100th Anniversary『Greatest Dream』
<出演者>
麻実れい、寿ひずる、平 みち、杜けあき、一路真輝、神奈美帆、高嶺ふぶき、紫 とも、鮎ゆうき、香寿たつき、えまおゆう、和央ようか、月影 瞳、安蘭けい、朝海ひかる、 貴城けい、水 夏希、彩吹真央、舞風りら、壮 一帆、音月 桂、白羽ゆり、望海風斗、愛原実花、愛加あゆ、 舞羽美海、朝月希和、真彩希帆 ほか。特別出演として、宝塚歌劇団より美穂圭子が出演。
*敬称略
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編集後記はこちら
<Information>
宝塚歌劇 雪組 pre100th Anniversary『Greatest Dream』
2023年10月21日(土)~ 30日(月)
東京建物 Brillia HALL(豊島区立芸術文化劇場)
2023年11月11日(土)~ 14日(火)
梅田芸術劇場 メインホール
料金:S席12,500円・A席8,000円・B席5,000円
発売日:2023年8月26日(土)
公演HP:https://www.umegei.com/greatest-dream/
問合せ:梅田芸術劇場(10:00~18:00)〈東京〉0570-077-039 〈大阪〉06-6377-3800
協力:宝塚歌劇団 宝塚クリエイティブアーツ
企画・制作・主催:梅田芸術劇場
ヘアメイク:茂手山貴子
photo by 近澤幸司 (Koji Chikazawa) https://www.chikazawakoji.com/
高知出身、都内在住のフォトグラファー。静止画、動画、ジャンルを問わず撮影中。
Twitter @p_tosanokoji
text by 鈴木陽子(Yoko Suzuki)
CS放送舞台専門局、YSL BEAUTY、カルチャー系雑誌ラグジュアリーメディアのマネージングエディターを経て、エンタテインメント・ザファースト代表・STARRing MAGAZINE編集長。25ヶ国70都市以上を取材、アーティスト100人以上にインタビュー。