望海風斗&甲斐翔真が日本発オリジナルミュージカル『イザボー』への抱負、お互いの演技を語る!

MOJOプロジェクト -Musicals of Japan Origin project-
ミュージカル『イザボー』

ミュージカル『イザボー』は、日本発ミュージカルを世界へ発信するMOJOプロジェクト -Musicals of Japan Origin project-の記念すべき第一弾。

百年戦争の時代、陰謀渦巻くフランス王朝で欲望のままに生き、国を破滅へと導いた最悪の王妃イザボー・ド・バヴィエールを演じるのは、望海風斗さん。共演には、日本のミュージカル界が誇る実力派の豪華俳優陣が集結する。

2022年『next to normal』で望海さんと親子役を演じ、2023年の『ムーラン・ルージュ!ザ・ミュージカル』(2024年再演予定)では恋人役で共演の甲斐翔真さんが、のちにフランスの第5代国王となるシャルル7世を演じ、実の母イザボーの生き様を辿っていくストーリー。

お二人に、オリジナルミュージカルの本作品への抱負、役へのアプローチ、お互いの演技などを伺った。


お互いの演技についての印象

共演を重ねて、お互いの演技にどのような印象をお持ちですか?

望海風斗(以下、望海)
とても自然で、相手に対して真っ直ぐな印象です。その日に舞台で起こったことを素直に受けとめて、決して無理をしていない感じがします。

甲斐翔真(以下、甲斐)
真っ直ぐ以外に、あるんでしょうか(笑)?

望海
(笑)役柄的なこともあったかもしれませんが、凄く真っ直ぐに、何かを隠すこともなく、変に格好つけることもないというか。

甲斐
あやこさん(望海の呼称)は、受けの芝居が凄いんです。サティーン役(『ムーラン・ルージュ!ザ・ミュージカル』)もダイアナ役(『next to normal』)もそのように感じました。多くの方々の芝居を受ける役柄的なこともあるのかもしれませんが、周りへの反応がとても早いと思います。

演技は、人間の身体を使って行うので、ある意味スポーツだと思っています。身体能力でいえば神経の伝達の速度も重要で、動体視力も優れている印象です。

望海
普段はそうでもない(笑)。

甲斐
たぶん、スイッチが入ると周りのすべてに反応して、表情や身体にも現れ、その神経の通り方のスピードが凄いな、という印象です。


役作りのアプローチ

どの役でも心がけている、役作りのアプローチは何かありますか?

甲斐

自分の演じる役がこの作品において、どのような役割を果たしているか、まず考えます。立ち位置を理解しないと、何も始まらないと思っています。無駄なところを膨らませても、演じる役に邪魔になることがあるからです。

例えば、この人は孤独だ、というのが誰にでも分かり得る人物像だとします。それはどうしてだろう、何を夢見ているのだろう、どんなものを見て聞いて育って、どんな人が好きで…といったことを考え出す、最初は地道な作業から始めます。台本は大きな幹のようなもので、どれだけやれば花が咲くのかもわからないけれど、最後に舞台で花を咲かせてくれるのが観客の皆様だと思っています。

望海
私は自分自身で考えすぎると、性格的に視野がどうしても狭くなりがちなので、最初はあまり細かく台本を捉えすぎないようにしています。

周りの方と一緒にセリフを交わして芝居をしていくなかで、こういう風に見られているからこういう人物の方が良いかもしれない、といった相手任せの部分もあります。

そこから最終的には自分の芯を決めていこう、というやり方は、演じる経験を重ねていくうちに自然に身に付いたように思います。

甲斐
だから受けの芝居も凄いんですね。

望海
受けすぎても大変(笑)。

(一同笑)

望海
どこに行っていいかわからなくなり、結局、自分って何だろう、というところに行き着きます。

なぜそのように自分が受けとって、そう思ったのか、相手に返したのか、など自分で突っ込みを入れていきます。今回の役でいうと、本当は何がしたかったのだろう、成し遂げたかったものは、という役割のようなものを最終的に見つけたい、と思っています。


悲劇にして喜劇、痛快エンターテインメント! 百年戦争の時代を背景にした、日本発オリジナル作品

日本発オリジナル作品への抱負、史実の人物や背景となる時代の印象もお聞かせください。

望海

演出家の末満健一さんの頭の中にしかなく、他の誰もがまだ知らない作品に私たちが関わっていく制作過程がとても面白く、楽しみにしています。迷うことも沢山あると思いますが、これだけ素敵な共演の皆様方が揃っているので、末満さん自身も想像していないところに辿り着く可能性もありますよね。

オリジナル作品なので、最後にお客様が入って完成し、私たちが初めて知ることもあると思います。この作品は、こういう意味を持っていたのか、と新たな発見をするかもしれません。誰も観たことがないので、それは初日を迎えるまで分からないけれど、完成を楽しみに作るのがオリジナル作品の魅力だと思います。

歴史的には詳しい方がいらっしゃると思いますが、ミュージカル界ではそこまで馴染みのない時代なので、演じやすさはありますよね。ジャンヌ・ダルクが活躍する少し前の時代で、取り上げられることが少ない頃の物語なので、そこは自由に役を作りやすい部分かなと思っています。

甲斐
オリジナル作品には無限の可能性があり、0(ゼロ)にも100にもなるものですが、自分たち役者にとって形のないものを作っていくのはとても楽しいことです。

自分たちはアクター(演技者)だけれど、クリエイターでもあると思います。だから、そのような仕事をしている立場から考えると、このように大きなスケール感の舞台に携われることに、とてもやりがいを感じています。

題材はフランスの歴史の話ですが、日本人の感性も入ってフランス人では思い描けない作品観になるのでは、と新たな扉を開ける感覚がしています。例えば、韓国でも再上演されたミュージカル『マリー・アントワネット』も、アジア的な感性が入った史実の背景とは全く違う雰囲気の作品になっています。そのように西洋と僕らの感性が合わさり、さらに新しい音楽がミックスされたら、約600年前の歴史の話に2024年の時代がオーバーラップした不思議な感覚の作品になるのでは、と予想しています。

 

「人生は薔薇色」、望海風斗が演じるイザボー役!

ここからは個別で、まず望海さんにお話を伺います。演出家・末満健一さんの印象は?

望海

末満さんの頭の中では考えを巡らせていて、私自身が想像するよりも大きな世界が広がっているのでは、と思います。それを汲み取っていくのが、とても面白そうだと感じました。すでにヴィジョンをお持ちだと思うので、その世界に自分が挑んでいくのが楽しみです。

人間の様々な感情を表現する、芝居面においても演じがいのある役と思われるイザボー役。オファーを受けた時のお気持ちは?

望海

「キター」と思いました(笑)。最近、雰囲気が柔らかくなったと言っていただくこともあるのですが、出会った役柄のイメージもあると思います。自分の中であまり開けたことのない扉を開いていく感覚が、これまで常にありました。

イザボー役に関しては、どちらかというと、戻ってきた懐かしい感覚があります(笑)。

宝塚歌劇団の在団中に、望海さんは男役でアル・カポネやドン・ジュアンといった役柄などにおいて、絶大な人気を博しました。

望海

時代の中で必死に生き抜く強さや、逆境を跳ね返すような戦いの場に戻ってきた感覚です。

また、イメージが前に戻るかもしれません(笑)。

“国を破滅へと導いた最悪の王妃”と称されるイザボーは、数々のエピソードが伝わる女性。どのように役作りを考えていますか?

望海

なぜそうしなければならなかったのか、という一番大事な背景があると思います。当時は王妃であれば世継ぎを産むことだけが重要な役割と求められるなかで、ストーリーが始まっています。どうやってその常識から抜け出せるのか、この国を本当に守っていけるのか、自分がどうにかしなければいけない、というのが、この人物の要になっていると考えています。

イザボーの中で沸き起こるエネルギーのようなものは、常に大事にしなければいけない、と思っています。悲劇と捉えるのは外から見た場合だけであり、イザボー自身の中では悲劇と思うと負けてしまう、むしろそれを乗り越えていこうという気持ちが大事だと感じています。

扮装ヴィジュアルにも、世界観の一端が垣間見えます。撮影エピソードはありますか?

望海

「人生は薔薇色」と思って、と撮影時に言われました。微妙に少し笑っているんです。

意外ですね! ティザーPV(予告動画)でなんとも言えない微笑のような表情をするのも、同じニュアンスですか?

望海

そうです。苦しい、のではなく、人生は薔薇色。私も皆も時代を生き抜いた、という表情です。

今回の作品は、望海さんが主演。ご自身が舞台を牽引する存在になりそうですか?

望海

役としては、やはり動かしていかなければならない部分があると感じています。そこは、この役と一緒にエネルギーを動かしながら、さらに周りが本当に個性も豊かで素晴らしい皆様方ばかりなので力をお借りできれば、と思っています。

音楽については、いかがでしょう。オリジナルのロック音楽にも、期待がかかります。

望海

絶対的にこのキーを出さなければ、という決まった楽譜の作品ではないので、プレッシャーから解放されて挑戦できる部分もあります。オリジナルの曲を自分たちが初めて歌うことになるので、楽しみにしています。

 

甲斐翔真が演じるシャルル7世は、扉を開ける希望を担い、ストーリーテラー的な役割!

 

ここからは、甲斐さんにお話を伺います。のちにフランス・ヴァロワ朝の国王となり、母イザボーと父シャルル6世の息子で、物語の語り手も担うシャルル7世。演じる役柄について、いかがでしょうか。

甲斐

劇中の物語から一番遠い存在の人物であり、だからこそ起こったことを振り返りたい、そこから始まります。だから、ストーリーテラー的な役割を担うのだと思います。

フランスの王になるので、知識や教養として知らなければならない部分を開けていきます。母のことも知りたい、しかし開けてはいけない扉のようにおそらく彼は感じていました。自身の王としての運命を受け入れ、国の歴史、本当の母の姿を知らないといけない、むしろ知るべきであるという状況からストーリーが進みます。

この強欲な時代に生きる人たちとは、彼は全く違う存在です。愛情を受けず、こんな混沌とした場所の王にならざるを得ない、元々は自分が座る席すら用意されなかった、「置いてけぼり」にされた存在の王太子だったと思います。

甲斐さんは、過去に『デスノート THE MUSICAL』で夜神月、通称「キラ」役を経験されています。舞台で、人間のダークな面を探求することについては?

甲斐

世の中には知りたいけれど知ってはいけなさそうな部分があり、その扉を開けるという経験を自分も体験するのでは、と思います。世の中には正論が正論ではなくなるという側面もあり、知るということは嫌な思いをすることもあるし、開けるときの感情が存在すると思います。

自分自身がシャルル7世と共通するだろうという点は、扉を開けることによって新しい答えが見つかって自分自身の学びとなる、ということです。そういうことが役を通して起こるかもしれません。おそらくそうなるのだろう、と考えています。

ご自身は、演じる役に自分の感情を取り入れて演技をされますか。

甲斐

そうですね。例えば、ありがとう、という感情を持ったことのない人が、「ありがとう」という台詞を上っ面で言ったとしても心に響かないと思います。そういうちょっとしたことでも、今回のシャルル役だったらどのようになるだろう、というのは考えます。

望海さんの悪女には、どのような期待を?

甲斐

もちろん格好良く演じてくださるでしょうけど(笑)、その裏にある孤独や愛など、民衆が持っていたイザボーの印象と僕の演じる役から見た印象とは違うところがあります。そこをお客様が僕と一緒にどのように感じてくれるのか、ということが大切だと思います。悪役と言われている反対側のところをシャルル7世自身が見たい、その気づきが救いとなり、また新たな扉を開けることになるのだと思います。

ここは少し核心に触れる部分でもありますが、母の本当の姿を知り、開けてはいけない扉を開いたことによって、心に固まっていたものが解(ほど)けて彼のピースが埋まり、時代が動いて次に進むべき道が見えてくるのだと思います。

 

普段の二人の関係性

お二人に伺います。普段のお互いの関係性はどんな感じですか?

甲斐

喋りたいことを喋って…

望海、甲斐
ぼーっとしてる(笑)。

居心地がよさそうですね。

甲斐

そうですね。僕が言っていいのか分かりませんけれど(笑)。

望海
落ち着きますね。構えなくてもいい、いつもそんな雰囲気を出してくれます。たまに面白いことを言ってくれるので、「きょう、何か出ないかな」と待っています。

(二人笑)

共演が続く役者同士の巡り合わせを、お二人はどのように感じていますか?

甲斐

自分たちでキャスティングはできませんから、不思議なご縁だな、と感じています。今回、『イザボー』『ムーラン・ルージュ!ザ・ミュージカル』両作品のお話を頂いた時に、来年は“望海イヤー”だと思いました(笑)。ずっとご一緒なので、観にいくと僕が出演していて望海さんファンには申し訳ないです(笑)。

望海
本当にずっと一緒だよね! 気がついたら、私のファンの方もみんな甲斐翔真の方に…

甲斐
(大笑いして)そんなことはないです!

 

お二人の仲の良いエピソードは、編集後記まで!

<Information>

MOJOプロジェクト -Musicals of Japan Origin project-
ミュージカル『イザボー』

作・演出:末満健一
音楽:和田俊輔

出演:望海風斗/甲斐翔真/上原理生 中河内雅貴 上川一哉/那須凜/石井一孝

大森未来衣 伯鞘麗名 石井咲 加賀谷真聡 川崎愛香里 齋藤千夏 佐々木誠
高木裕和 堂雪絵 中嶋紗希 宮河愛一郎 安井聡 ユーリック武蔵
【スウィング】井上望 齋藤信吾 高倉理子

美術:松井るみ 照明:関口裕二 音響:山本浩一 衣裳:前田文子 ヘアメイク:宮内宏明
音楽監督・編曲:桑原まこ 歌唱指導:西野誠
振付:三井聡/港ゆりか アクション指導:星賢太
演出助手:渋谷真紀子/高橋将貴
舞台監督:幸光順平
宣伝美術:岡垣吏紗 カメラマン:中村理生

票券協力:サンライズプロモーション東京/リバティ・コンサーツ
主催・企画・製作:ワタナベエンターテインメント

公式サイト   https://isabeau.westage.jp/

ワタナベ演劇公式X(Twitter) 
@watanabe_engeki

ワタナベ演劇公式Instagram 
@watanabe_engeki_staff

チケット一般発売:2023年11月25日(土)午前10:00〜
チケット料金:S席12,500円/A席9,000円(全席指定)※未就学児入場不可

【東京公演】
公演日程:2024年1月15日(月)〜30日(火)
会場:東京建物Brillia HALL(豊島区立芸術文化劇場)

【大阪公演】
公演日程:2024年2月8日(木)~11日(日)
会場:オリックス劇場

*最新、スケジュールは公式情報参照

 

(望海)
スタイリスト:為井真野(KIND)
ヘアメイク:yuto

(甲斐)
スタイリスト:伊里瑞稀
ヘアメイク:ASUKA(a-pro.)

衣装クレジット:
(望海)
スヌード風ケープ、シャツワンピース/ともにモガ
イヤリング、リング/ともにアビステ、ブーツ/スタイリスト私物

問い合わせ先
アビステ(03-3401-7124)
モガ(03-6861-7668)

(甲斐)
シャツ/ブランド STAUR
ジャケット、パンツ/ブランド COOR
シューズ/スタイリスト私物

問い合わせ先全て
MUSINSA GLOBAL STORE / ムシンサ グローバル ストア

 

photo by 近澤幸司 (Koji Chikazawa)  https://www.chikazawakoji.com/   
高知出身、都内在住のフォトグラファー。静止画、動画、ジャンルを問わず撮影中。
Twitter @p_tosanokoji

text by 鈴木陽子(Yoko Suzuki)
CS放送舞台専門局、YSL BEAUTY、カルチャー系雑誌ラグジュアリーメディアのマネージングエディターを経て、エンタテインメント・ザファースト代表・STARRing MAGAZINE 編集長。25ヶ国70都市以上を取材、アーティスト100人以上にインタビュー。

 
 
 

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